読み込み中です...

2018年2月21日(水)

「コンバイン道」を究めるスキーノルディック複合 渡部暁斗

スキーノルディック複合の渡部暁斗選手。

このオリンピックは、複合の王者「キング・オブ・スキー」の称号をつかむための戦いでした。
2大会連続の銀メダルは獲得しましたが悲願達成はならず。

ピョンチャンで、もがき、苦しんだ渡部選手の戦いの軌跡をスキー担当・山本脩太記者がお伝えします。

絶好調で乗り込んだ五輪

「2位は見飽きた」。

オリンピック前に渡部選手が口にしてきたことばです。

前回ソチ大会は銀メダル、ワールドカップのシーズン個人総合ランキングでもたびたび2位に。

ヨーロッパのメディアや関係者は渡部選手を「シルバーコレクター」「ミスターナンバー2」などと皮肉交じりに評するようになりました。

今回のオリンピックは渡部選手にとって、金メダルをつかんでこうした評価を覆したい戦いでした。
その手応えもつかんでいました。

オリンピック直前のワールドカップでは、自身初の4連勝を含む5勝。個人総合ランキングトップで本番を迎えていたからです。

「キング・オブ・スキーとして認められるためには、オリンピックの金メダルが必要」

そう力強く言い切って自身4回目のオリンピックに臨みました。

ノーマルヒルはまたしても

初戦の個人ノーマルヒル、前回のソチ大会では銀メダルを獲得した種目です。

「金メダルへの距離は前回よりも確実に近い」。

渡部選手は確かな手応えをつかんで臨んでいました。前半のジャンプは最終ジャンパー。

その直前、有利とされる向かい風がやみました。前を飛んだノルウェーの選手は失敗ジャンプ。

渡部選手は「流れが悪い」と感じました。しかし、わずかに向かい風が戻った一瞬を見逃さず105メートル50の3位。

後半のクロスカントリーはトップと28秒差。金メダルを狙える位置につけました。

クロスカントリーは2.5キロのコースを4周、10キロで争う勝負です。

ここで、前回ソチ大会と同じような展開が待っていました。ソチ大会の金メダリスト、ドイツのエリック・フレンツェル選手との争いでした。

渡部選手は、8秒遅くスタートしたフレンツェル選手に2周目に追いつかれ5人の集団に。

集団の中で2人は激しくけん制しあい交互に先頭に入りながら集団を引っ張りました。1人、また1人が脱落し残り1キロ。

ペースを上げたフレンツェル選手に渡部選手も食らいつき2人のマッチレース。

ここまでは、プラン通りの展開でした。

最後の上り坂を迎えたところでフレンツェル選手が猛スパート。「分かっていた」という渡部選手も必死に追いますが、振り切られました。

結果は4.8秒差の2位、またも銀メダルでした。

「うれしさ半分、悔しさ半分」と振り返った渡部選手、すぐに「金メダルに再挑戦する」とラージヒルを見据えました。

再挑戦のラージヒル

迎えた6日後の個人ラージヒル。勝敗の分かれ目は、やはり後半のクロスカントリーでした。

クロスカントリーを制さなければ金メダルはつかめないと、渡部選手はオリンピック前、“賭け”に出ていました

それは体重を2キロ増やしたことでした。

ジャンプは体重が軽い方が有利ですが、クロスカントリーのダッシュ力をつけ、僅差の勝負に勝つための準備でした。

前半のジャンプは、134メートルを飛びトップ。

ノーマルヒルで敗れたフレンツェル選手に24秒差をつけました。
試合前、渡部選手は20秒から30秒あれば逃げ切れるのではないかと考えていましたが、想定外の事態が起きます。

4位のフレンツェル選手から6位まで、クロスカントリーに強いドイツ勢が3人並んだのです。

「3対1で追われるので厳しいレースになる」と気持ちを引き締めました。

レースは渡部選手の予想通り、警戒していたドイツ勢に差を詰られ、追いつかれました。

「いつもと同じ作戦では金メダルは取れない」。

渡部選手が先に仕掛けました。集団から抜け出しますが、「思っていたより体力が残っていない」と焦っていました。

そして集団で入った残りおよそ1キロの上り坂、スキー板が別の選手に接触してバランスを崩して差を広げられ、勝負は決まりました。

結果は5位。タイムはノーマルヒルより速かったにも関わらず、ドイツ勢との勝負で敗れました。

再び称号をつかむために

ノルディック複合は「矛盾」を究める戦いです。瞬発力が必要なジャンプと持久力を要するクロスカントリー。

相反する能力を高いレベルで持ち合わせ、その難しさに挑み続けることが複合選手の誇りでもあります。
今回、渡部選手は「キング・オブ・スキー」の称号はつかめませんでした。

5位に敗れた戦いを「体力が限界に来ていたので、接触がなくても順位は変わらなかった」と一切言い訳をせず、負けを認めました。

それでも「頂上は見えているけれど登り方が分からない」。目の前まで来ていた金メダルを僅かの差で逃した無念さが、このひと言に凝縮されていました。

渡部選手は金メダルをとるため、座禅やヨガ、スポーツクライミング、自転車など、これまであらゆることにチャレンジしてきました。

複合は英語で「コンバインド」といいます。

渡部選手はこれをもじって「コンバイン道(どう)を究める」と日頃から話します。

自分が信じた道をひたすらに究める。

大好きな宮本武蔵のように、これからも「天下無双」を目指して「キング・オブ・スキー」をつかむ道を突き進みます。

山本脩太記者

ピョンチャンオリンピック現地取材班
スキー担当

                   
※NHKサイトを離れます

関連記事

    人気の記事ランキング

      記事ランキングをもっと見る

      最新の記事