読み込み中です...

2018年2月5日(月)

今と昔で飛距離が5倍に!スキージャンプの進化の歴史がすごい!

体とスキー板をほぼ平行にして飛ぶのでおなじみのスキージャンプ。実はあのスタイルになるまでいろいろな過程があったのです!その進化の歴史をスキージャンプに詳しいトリノオリンピック元日本代表・一戸剛さんに解説していただきました!

一戸剛さん

1976年生まれ 2006年日本代表としてトリノオリンピック出場
早稲田大学スキー部監督、全日本学生スキー連盟ジャンプ強化部長などを兼任。
女子ジャンプワールドカップの解説も行っている。

1930年①空中で手を回す

1930年当初はシューズとスキーが離れず、アルペンスキーのようなもので飛んでいました。前に傾くとスキーの先端が下がっていくので、飛ぶというよりはジャンプしていた時代です。飛距離は20メートルから30メートルが限界でした。

今となっては想像できないかもしれませんが、空中ではぐるぐる手を回しながら飛んでいたのです。「手を1度回すと1メートル」と言われていたようです。腕の反動を使って、少しでも長く飛びたいという思いが伝わってきます。


1930年② バンザイスタイル

1930年代には手を前に出すバンザイスタイルもありました。少しでも浮力を得ようとしたのでしょうか。しかしこの状態では、上半身が力んでしまい、バランスをとるのが難しく感じます。

このころは、手をVの字に広げる選手や手をそろえる選手とさまざまでした。当時はジャンプのスタイルが定まっておらず、どの選手も自分の納得のいく飛び方を追求しようとする様子がうかがえますね。

1952年 クラシックスタイルの初期

クラシックスタイルとは「スキーをそろえて飛ぶスタイル」のことです。この頃から、シューズのかかと部分がスキーから離れていることが分かります。前に傾けてもスキー先端部分が上がった状態に保たれるので、より深い前傾姿勢をとることが可能となりました。

また腕を回さずに体側で鳥のように少し開いている選手が多くなりました。これはクラシックスタイルの最初の段階で、安定した姿勢と、風に乗りやすそうな体勢は、現在にも通じているのかもしれませんね。

1956年 フィンランド型/レックナーゲル型の二派が存在

当時は、腕を身体につけるフィンランド型か、前に出すレックナーゲル型かで二派に分かれていました。しかし、1964年のインスブルックオリンピックでフィンランド型の選手が優勝して以来、レックナーゲル型はほとんど使われていません。

札幌オリンピック(1972年)金メダルの笠谷選手もフィンランド型を採用していました。このころから靴や金具が少しずつ改良され、体を伸ばしても前傾が可能になってきました。よく見ると当時はまだゴーグルをつけていないんですね。

1960年 ルード型の登場

バンザイするように手を上げる「ルード型」の姿勢をとる選手が登場しました。ルードとはもともと選手の名前です。

このスタイルの欠点は手を前に出すタイミングによってバランスを崩すこと。手の部分で体面積が多くなり有効と感じますが、ジャンプはスムーズに体を空中に投げ出す競技なので、かなり無駄な動きであったと思います。

1969年 クラシックスタイルの完成期

スキーをそろえて飛ぶ、クラシックスタイルの完成形です。腕を体側にきちんとつけることでスムーズな空中移動が可能になりました。姿勢がとてもきれいですよね。

1980年代 クラシックスタイルとV字が混在

こちらの写真は1984年サラエボオリンピックのときの飛び方です。

まだV字ではなくクラシックスタイルです。かかと部分が大きく離れていて、前傾姿勢をかなり深くとることが可能になりました。

同じく1988年のワールドカップのときのニッカネン選手です。ニッカネン選手の飛び方はクラシックスタイルの進化版です。今まではスキーを体の前にそろえて飛ぶのが常識でしたが、ニッカネン選手はそろえたスキーを体の前ではなくすこし横にずらしていました。

これにより体面積がスキーと体の二つとなり浮力を得る面が大きくなりました。体とスキーでV字のような形を作って、最大限に浮力を得ています。この飛び方でニッカネン選手が勝ち続けたことで、世界中の選手がこの形をまねしました。

1992年 V字姿勢が一般的に

1992年のアルベールビルオリンピックはオリンピックで初めてV字姿勢がとられた大会です。このころはまだクラシックスタイルとV字型にする選手がいました。

しかし、優勝者はみなV字であったことから、クラスシックスタイルは採用されなくなったようです。V字の姿勢でスキーを広げることにより、スキーと体の面積がより大きくなり、より多くの浮力を得ることができました。飛距離も飛躍的に伸びました。ジャンプ選手にとっては無くてはならない羽を手に入れたという感じでした。

1998年 より深い前傾姿勢が可能に

1998年船木選手はほぼ板と同じポジションになるくらいの前傾姿勢です。

当時、スキーの長さのルールなどはなく、日本選手は器用でスキー操作にすぐれており、長いスキーを利用し深い前傾を持ち味とし、凧のような形で世界を制しました。

しかし、新たにスキーの長さに関するルールが加わり、背の小さな選手(175㎝以下)は軒並みスキーを短くしなくてはいけなくなりました。そのため、飛距離を出すことが再び難しくなりました。せっかく手に入れた羽を折られた感じですね。

2017年 空中をまっすぐ進む現在のスタイル

昔の飛び方はスーツにも浮力があったため、スキー板と体全体に抵抗を受けて高く飛び出し、浮力をもらってゆっくり落下していました。

現在はスーツが小さくなり、昔のように浮くことができません。浮力を体全体で受けるというより、飛び出してから空中を前方に進んでいます。

現在と過去の比較を図にすると以下のようになります。

一時期は長身の選手が活躍しましたが、現在は背の小さな選手も活躍しています。空気抵抗を避け、スピードに乗ってまっすぐ前に進む、という飛び方で背の小さな小柄な選手も活躍できるようになったのです。

長いスキーでの抵抗を避けるため、ルールよりもさらに短いスキー板を使っている選手さえいます。

今のジャンプ競技は飛び出してから前にまっすぐ進み、落下する地点を遠くすれば飛距離が伸びるという考えです。

今までさまざまな飛び方がありましたが、ようやく現在の形に落ち着きました。それに伴って飛距離は20~30メートルから100~130メートルにまで伸びたのだから驚きですね。

さらに現在のルールは体格差で有利、不利にならないよう非常に平等になっていて、どの選手が勝ってもおかしくないほど細かく決められています。

平昌オリンピックでもジャンプはメダル有力候補、選手それぞれ飛び方が少しずつ違うところにも注目して、楽しんで応援したいですね。

                   
カテゴリ
※NHKサイトを離れます

関連記事

    人気の記事ランキング

      記事ランキングをもっと見る

      最新の記事