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専門家に聞く“新型コロナウイルス”との闘い方と対策

2020年3月27日

2020年3月22日(日)に放送された番組の一部を記事にまとめました。国の専門家会議で示された「オーバーシュート」などの情報や、感染のメカニズムなどを紹介します。

「新型コロナウイルス」に関する情報は日々、更新されています。最新の情報はこちらの特設サイトでもご確認ください。

地球規模で猛威をふるう「新型コロナウイルス」。医療体制が危機に陥り、亡くなった患者の埋葬が追いつかない国まで出てきている。私たちは未知のウイルスに、どう立ち向かえばよいのか。専門家とともに考える。

「オーバーシュート」が起こると、どうなるのか?

“オーバーシュート”とは、感染者がある一定のレベルを超えて爆発的に増えること。これが起きることで社会はどうなるのか?感染症対策のスペシャリスト、東北大学大学院教授の押谷仁さんに伺った。

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「オーバーシュート」とは?

「“オーバーシュート”というのは、感染者がある一定のレベルを超えますと爆発的に増えることを言います。クラスター連鎖を見失ってしまうことによって感染が拡大して“大規模なクラスターが起き、医療が崩壊することによって医療現場で非常に大規模な院内感染が起こる。そのようなことをきっかけにして、おそらく今“オーバーシュート”、感染者の爆発的な増大というのが世界各地で見られているのだと思います。“オーバーシュート”が起こると感染を制御することができませんので、いま世界各地でやっていることは“都市の封鎖”(ロックダウン)です。すべての交通を遮断して、都市の中で人が出歩くこともほぼ停止しないと、止まらないという状態になります。」(押谷仁教授)

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日本のPCR検査について

「PCR検査の数が少ないので見逃している感染者が多数いるのではないかという指摘もありますが、本当に多数の感染者を見逃しているのであれば、日本でも必ず“オーバーシュート”が起きているはずです。現実に日本では“オーバーシュート”が起きていません。日本のPCR検査は、クラスターを見つけるためには十分な検査がなされていて、そのために日本では“オーバーシュート”が起きていない、と。
実はこのウイルスでは、80%の人は誰にも感染させていません。つまりすべての感染者を見つけなければいけない、というわけではないんです。クラスターさえ見つけられていれば、ある程度制御ができる。むしろすべての人がPCR検査を受けることになると、医療機関に多くの人が殺到して、そこで感染が広がってしまうという懸念があって、PCR検査を抑えていることが日本が踏みとどまっている大きな理由なんだ、というふうに考えられます。」(押谷仁教授)

「オーバーシュート」を起こさないためには?

「感染者、感染連鎖、クラスター、クラスター連鎖。このいずれも監視下に置くことができれば、流行は起こさないです。そういうことが、今の日本の戦略だということになります。」(押谷仁教授)

新たな感染の仕組みとは?

これまで主な感染経路として考えられてきたのは、ウイルスが付着したものに触れることで感染する「接触感染」と、くしゃみや咳から出る飛沫を吸い込むことで感染する「飛沫感染」。しかし、今、新たな感染経路「マイクロ飛沫感染」の可能性が指摘されています。

「マイクロ飛沫」とは?

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今回NHKは研究者と協力して実験を行いました。強力なレーザー光で空中に舞う粒子を光らせ、高感度カメラで撮影します。0.1マイクロメートルの粒子まで捉えることができる、世界最高水準の技術です。
実験開始。まずはくしゃみです。目に見えるのは直径1mm程度の大きな飛沫。すぐに落下します。ところが高感度カメラで見てみると、キラキラと漂う粒子が浮かび上がりました。大きさは1/100ミリ。10マイクロメートル以下の小さな粒子。小さく軽いため漂い続けているのがわかります。これが“マイクロ飛沫”の正体です。実験では少なくとも20分、“マイクロ飛沫”は空気のよどみで漂い続ける可能性が明らかになりました。

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※画像は一般的な“マイクロ飛沫”の動きを示したものです。「新型コロナウイルス」の感染のリスクを示したものではありません

「“マイクロ飛沫”、小さな粒子の中にもたくさんの生きたウイルスがいて、大きな声での会話あるいは激しい息遣い。そういった中でこの“マイクロ飛沫”ができて、それを近くの人が吸い込むことによって活性が広がる。そういったリスクが見えてきたものと思います。」(舘田一博 日本感染症学会 理事長)

「マイクロ飛沫」のよどみを防ぐ方法は?

効果的だと考えられるのが窓を大きく開け、部屋の空気を入れ替えること。“マイクロ飛沫”は小さく軽いため、空気の流れを作れば排出することができるのです。

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「2か所開けて風の流れを作ってあげることが大事。それを1時間に1回でもいいからやることによって、感染のリスクはかなり下げることができるようになるのではないかと思います。」(舘田一博 日本感染症学会 理事長)

「新型コロナウイルス」と、どう闘う?

一般的に寒く乾燥した季節に感染が拡大すると言われるウイルス。しかし温暖な地域での感染状況などから、新型ウイルスは異なる特徴を持つという指摘もある。ワクチン、集団免疫、行動変容の3つで感染症と闘えるのだろうか?

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「ワクチンは時間がかかりますし、本当にワクチンができるのかということも、よくわかっていません。
次の集団免疫という考え方は、人口の7割ぐらいの人は感染して、多くの人が亡くならないと集団免疫はできないというものになります。
我々が今やっている“行動変容”を中心とする、しかも中国式ではなく社会活動の制限を最小限にして、しかも感染拡大のスピードを最大限抑えていく。そういう日本方式の対策をやることによって、ある程度このウイルスを制御できる見込みが出てきた。そういう希望の光が見えてきたという段階です。
ただ今後の流行はさらに厳しいものになるので、対策を徹底的にやるということが必要なのだと思っています。」(押谷仁教授)

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「新型ウイルスは熱帯地域でも拡散すると想定すべきです。気候にかかわらず感染するものとして、感染拡大に対応していかなければなりません。」(デレク・カミングズ教授 フロリダ大学 新興病原体研究所)

「新型コロナウイルス」にどう立ち向かっていけばよいのか?

世界で感染拡大が続く新型コロナウイルス。私たちは、どのように立ち向かっていけばいいのだろうか?政府の専門家会議のメンバーで、東北大学院教授の押谷仁さん、東北医科薬科大学特任教授、賀来満夫さんに伺った。

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「私たちは個人個人でできることをしっかり守っていくこと。そしてそれを社会全体で、みんなでやって行くこと。個人と社会がともに協力して対応していくということが、打ち勝つ1つの方法だと思います」(賀来満夫特任教授)

「非常に対策の難しいウイルスだと思います。ただし、日本はこれまで踏みとどまっています。クルーズ船の問題やPCR検査のキャパシティの問題などで、日本はいち早く世界の中でも流行を起こすのではないか、ということは懸念されていましたが、日本がここまで踏みとどまっている。
そのことによって、世界はいま日本の対策に非常に注目しています。アメリカ、ヨーロッパが次々に“オーバーシュート”していく中で、アジア・アフリカでは“オーバーシュート”を起こしていると考えられる国はまだありません。そうすると日本の知見が世界のウイルスとの闘いに非常に重要になる可能性があります。我々は世界の英知を結集して、1人1人の人がこの問題にもっと真摯に向き合って、対策を日本に住むすべての人に考えてもらうことによって、この問題を克服できるというふうに信じています」(押谷仁教授)

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NHKスペシャルでは、今後も「新型コロナウイルス」に関する番組を放送予定です。

今後の放送予定

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この記事は、2020年3月22日に放送した 「NHKスペシャル “パンデミック”との闘い ~感染拡大は封じ込められるか~」 を基に制作しています。

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