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人類を繁栄に導いた“アブラ”
アブラにまつわる「2つの大事件」とは?

2020年1月10日

とり過ぎると体に悪いイメージがある「アブラ」だが、じつは人類の生存に欠かせない“命のアブラ”が存在していた!6億年前から続く、人類の祖先とアブラとの壮大なドラマを徹底解明。私たちの体に本当に必要なアブラとは何か?「2つの大事件」から、“理想のアブラ”の真実を紐解いていく。

(第1の大事件)

人類の進化と切っても切れない「命のアブラ」オメガ3脂肪酸。最新の研究で、その深い関係は6億年前の「第1の大事件」をきっかけに始まったことが分かってきた。

6億年前、地球の生命は海の中で暮らしていた。その体内には特別な遺伝子があり、自分の体に必要なオメガ3脂肪酸は、その遺伝子の働きによって作り出すことができた。

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海底の藻などには、自分でオメガ3脂肪酸を作り出せる特別な遺伝子があった

ところが私たちの祖先が、オメガ3脂肪酸を含む海藻などを食べ始めると、食べ物からも体内にオメガ3脂肪酸を取り込めるようになった。すると、「もうオメガ3脂肪酸を作り出す遺伝子なんて不要でしょ」と、大事な遺伝子が消えてしまったと考えられるのだ。

貴重な遺伝子を失ってしまった「第1の大事件」の後、私たちの祖先はどうなったのか?

およそ5億年前になると、強い動物が弱い動物を食べる「弱肉強食」の時代が始まった。もうオメガ3脂肪酸を自分で作り出せる遺伝子を持たなくなった祖先たちは、「オメガ3脂肪酸を含むものを食べて補給」しなければ体を維持できなくなっていた。

そして始まったのが、オメガ3脂肪酸の「争奪戦」だ。小さくて弱い動物は海藻などを食べて、そこに含まれるオメガ3脂肪酸を手に入れた。その動物を他のより大きな動物が食べて、オメガ3脂肪酸を一挙に獲得。こうして多くのオメガ3脂肪酸を食べて手に入れられた生物が、次第に強くなっていったのだ。

現代の海の中でも、マグロのような強い魚は他の小さな魚をたくさん食べて、身に多くのオメガ3脂肪酸を蓄えている。それをさらに獲って食べているのが私たち人間。誰より貪欲にオメガ3脂肪酸を食べることで、健康を維持している生物なのだ。

(第2の大事件)

こうして人類が「食べ物からとらないと生きていけなくなった」オメガ3脂肪酸が、さらにその後、人類に進化の大躍進をもたらす「第2の大事件」を引き起こしたことが分かってきた。

人類誕生の地・アフリカ大陸の最南端にある、岩だらけの岬ピナクル・ポイント。岸壁に並ぶ洞窟では、およそ16万年前から人類の祖先が集団で暮らしていた。その祖先たちに「運命を分ける大事件」が起きていたことが、最新の調査から明らかになった。

その大事件とは、およそ7万4千年前に、南アフリカから9000kmも離れたインドネシアのトバ火山で起きた「巨大噴火」だ。莫大な量の噴出物が地球の大気中に放出され、長期間太陽光を覆い隠し続けた。その結果、地球の平均気温は12度も低下し、「火山の冬」と呼ばれる急激な寒冷化が起きたのだ。

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その影響で多くの動植物が死に追いやられ、アフリカ中に広がっていた人類の祖先も食糧難で絶滅の危機に追い込まれたとみられている。そのような危機の中、南アフリカの海辺で暮らしていた祖先たちは、意外にも「大きな飛躍のチャンス」をつかんでいたという驚きの事実が見えてきた。

アリゾナ州立大学人類進化研究所のカーティス・マレアン博士が示すのは、祖先たちが大量に食べていた食べ物の痕跡だ。

「この海辺の祖先たちがトバ火山の巨大噴火の後も、豊かな暮らしを続けていた証拠を見つけたんです。」(マレアン博士)

火山灰を含む地層の上、つまり噴火後に襲った「火山の冬」の食糧難時代の地層から、祖先たちが食べていた物をうかがい知る残骸が大量に見つかったのだ。たとえば、食べた後のウミガメの骨。そして、クジラの体にだけ付着するフジツボ。クジラの肉を食べていた証拠とみられている。

中でも祖先たちが大量に食べていたと考えられるのが「貝」だ。暮らしていた洞窟近くの海辺には、今も岩場に大量のムール貝が付着している。巨大噴火の難を逃れた海の生き物たち、つまり「海の幸」を食料にして、祖先たちは命をつないでいたのだ。

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発掘された貝殻

そして、これら「海の幸」のどれにも多く含まれていたのが、「オメガ3脂肪酸」だった。

「手に入る食べ物に、人が生きていくために欠かせないオメガ3脂肪酸などが豊富に含まれていました。そんな幸運に恵まれて、海辺に暮らしていた祖先はどんどん子孫を増やして繁栄できたと考えられるのです。」(マレアン博士)

詳しくは、「体に良いアブラ」って何?その答えは“人類の進化”にあった!

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