キーワード

「ご飯」で日本人はどう変わった?
日本人とご飯を結ぶ、3つのキーワード

2019年11月22日

日本人の主食として長年親しまれている「ご飯」。人類と糖質の関係を起源までさかのぼると、ご飯には日本人の遺伝子や腸内細菌を変えるほどの力が備わっていることが判明した。「食の大革命」を引き起こした糖質・ご飯と日本人の関係を探る。

・糖質

人類が農耕を始めると、糖質を多く含むさまざまな穀物を育て始めた。その中でも日本人の祖先が選んだのが、「コメ」だ。日本人の主食となったお米には非常に優れたパワーが秘められている。

電子顕微鏡で捉えると、まず見えてきたのはでんぷんの結晶。我々の最も重要なエネルギーとなる糖質のかたまりだ。さらに拡大すると、でんぷんの隙間に見えてきた小さな粒が「タンパク質」。その中に、健康に欠かせない必須アミノ酸もすべて含まれているのが、お米ならではの特徴だ。

photo

さらに、ちょっと意外だがお米には「食物繊維」も随所に含まれている。実は日本人は食物繊維を主食のご飯から一番多く摂っているという。ほかにもビタミンやミネラルなど、人間の体に必要な栄養素が詰まっている優れた栄養食である。しかも、長期間貯蔵ができるため、いつでも食べ物に困ることがなくなった。

優れもののお米が日本でも栽培され始めたのは、およそ3千年前のこと。それまで木の実などから糖質を摂っていた日本人の食生活は激変した。そして日本人は世界で最もご飯を食べる民族になったのである。

・アミラーゼ遺伝子

ダートマス大学研究室のドミニー博士は世界のさまざまな民族の唾液を集めて、そこに含まれる「アミラーゼ遺伝子」を解析。アミラーゼ遺伝子とは唾液に含まれるアミラーゼという酵素を作る遺伝子で、口の中で、でんぷんを甘い糖に分解する働きがある。分析の結果、でんぷんをあまり食べない民族は、アミラーゼ遺伝子を4から5個持つ人が最も多いことが分かった。

一方、でんぷんを多く食べる日本人は全体的に遺伝子の数が多く、平均で7個あることが確かめられたのだ。しかも、アミラーゼ遺伝子の数が多い人ほど、でんぷんを食べても「太りにくい」体質だと言う。

「アミラーゼ遺伝子が多いことは、健康長寿にとって非常に有益です。例えば、肥満を抑制する効果があるんです。」(ドミニー博士)

鍵を握るのは、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモン。このホルモンが出過ぎると、太りやすくなることが分かっている。

でんぷんをとった時、「インスリン」がどれだけ出るかを調べたところ、アミラーゼ遺伝子が多い人は、およそ20%もインスリンの分泌量が少ないことが分かった。つまり、日本人にはご飯などのでんぷんを食べてもインスリンが出過ぎず、太りにくい人が多いと言える。

photo

ご飯を主食に選び多く食べ続けてきた日本人。その食生活が遺伝子まで変化させ、肥満や糖尿病になりにくい体質へと進化させていたのだ。

・プリボテラ菌

東南アジアのラオスにあるジャングルの奥地に、非常に多くのご飯を食べている少数民族がいる。彼らの食事は蒸した大量のもち米が中心で、家族4人が1日3kgくらい食べると言う。

これだけ多くのご飯を食べているのに、肥満や生活習慣病の人はほとんど見当たらない。彼らの体に何か秘密があるのか?

謎を解明するため、村人たちの便を集めて彼らの腸内細菌を分析。結果は驚くべきもので、「プリボテラ菌」という珍しい腸内細菌が非常に多く存在していた。欧米人などには、あまりみられない菌だが、ラオスの村人たちはプリボテラ菌が全腸内細菌の2割以上を占めているのだ。

プリボテラ菌はご飯などの糖質を食べて、「短鎖(たんさ)脂肪酸」という物質を作り出す。短鎖脂肪酸は脂肪の燃焼を促して肥満を防いだり、免疫の働きを良くして動脈硬化や糖尿病を予防したりするなど、優れた健康効果があることが最新研究で明らかになっている。

かつての日本人は、ラオスの少数民族と同じくらい多くのご飯を食べていた。そのため、腸内にプリボテラ菌が多くいた可能性があると、研究者たちは考えている。

日本人約50人の腸内細菌を調べた結果、プリボテラ菌は全腸内細菌の7.5%と減ってはいるものの、確かに受け継がれていることが分かった。

photo

日本人は主食にご飯を選び、食べ続けたことで、「健康を守る腸内細菌」まで授かっていたのだ。

詳しくは、「ご飯」は健康長寿の敵か?味方か?

この記事は、2019年11月24日放送の 「NHKスペシャル 食の起源 第1集「ご飯」~健康長寿の敵か?味方か?~」 を基に制作しています。

新着記事