Special Interview

秘話も裏話もいらない!誰もが知っている歴史を映像で伝える

「映像の世紀」 制作統括 河本哲也

初めて映像で見る歴史。時代感、空気感を!

Title

最大のポイントは1995年が映像の発明から100年目ということで、世紀末の企画としてスタートしました。19世紀の半ばまで情報を伝達する道具は絵画と活字しかありませんでした。それが20世紀になって、自分たちの過去の歴史や未知の世界を動く映像で見ることができるようになったのです。

映像の世紀に入った20世紀、カメラマンはまず何を撮ったのか。それは世の中に何をもたらし、どう絡み合っていったのか。映像が記録していくという作業に、いったいどういう意味があるのか。世界各地から集めたアーカイブス映像を全面に押し立てた番組作りをしようと決めたのです。

  • 1

Title

映像をフルに使わなければ意味がないので、歴史の秘話とか裏話はいらない。動脈の部分、誰もが知っている中高生の歴史の教科書に出ていることだけでいい。その時がどんな時代だったのか。初めてムービーで見せられるのだから、その時代感、空気感を見せることが第一義だと決めました。

  • 1
  • 1

Title

テレビはビジュアルだということを大切にすべきだと考え、それまでのドキュメンタリー番組のような分析、解析ということを遠のけました。ビジュアルな紙芝居のようにしようと決めてインタビューを禁じ手にしたのです。ただ、当時の日記、演説の記録など活字ドキュメントはフルに利用。時代の空気感なり現場感を伝えようと決めてスタートしたのですが、走りながら考えたというほうが正しいかもしれません。

Title

もちろん企画段階では批判もありました。CGが進化している時代にモノクロで雨の降るような映像を誰が見るのか。内容も第一次世界大戦や第二次世界大戦など、みんな知っていることではないか、というのです。しかし多くはイメージで知っているつもりになっている。そんな人たちの目をちょっと覚まさせるのもテレビの役割かもしれないし、何も知らない人の入り口をトントンと叩いてみるものなのかもしれないという姿勢でした。

  • 1
  • 2

シンプルな構成、エンターテインメント

Title

テレビというのは歴史の専門家にほめてもらってもしかたがないところがあります。なぜなら学者なら知っていることばかりかも知れない。だけど、歴史のテーマから遠い人たちが、「あっ」というふうにのぞき込んでくる。近寄ってくる。歴史に興味のない人たちが見たくなるような感じで誘い込みたいと思ったのです。

  • 1
  • 1

Title

エンターテインメントの味付けを残さない限り、しかめ面したドキュメンタリー番組を作ったところで視聴者は見てくれないと思い、あの11本はとにかく映像として面白いものは見せまくるというふうに割り切りました。みんな勉強しようと思ってテレビの前にいるわけではないのだから、なんとなく見ていて「おおーっ」となってチャンネルを変えずにちょっとだけ見ようかなという、テレビというのは、興味のない人を誘い込むことが重要なんです。

Title

本来、ナレーションの役割というのは、映像の説明はしないものなんです。映像の説明とは違う情報を語るというものです。その意味では、「映像の世紀」はディレクターが絶対に書いてはいけないといわれる説明的なナレーションですね。新人ディレクターの書く台本です(笑)それはひとえに、カメラが何を映してきたのかを描く番組で、歴史を解析する番組ではないからです。だから「これは何々の映像です」というコメントになったんです。

  • 1

Title

カメラが映し出した映像が本物か偽物か、プロパガンダか再現映像か。そうしたことはわかる限りはコメントする。だけど歴史の専門家はいても、歴史的な映像の専門家がいるわけではない。この映像は「調べてみたらドイツかベルギーのものだとわかったけれど、それ以外わかりませんでした」とかね。そうするしかなかった。

  • 1
  • 1

Title

それはうれしいことですね。当時、NHKの番組としては比較的若い人たちが見てくださっていたようです。まさに彼らに見てもらいたいという思いがありましたから。それというのも学校で学ぶ歴史は、縄文時代や弥生時代、平安朝から江戸時代までは詳しいのに、現代史は、時間がなくてばたばたと終わってしまい、まともに勉強していません。20世紀のことをほとんど知らないということに納得がいかなかったからです。

Title

世の中の事象はすべて過去の連鎖上にあります。しりとりのように。小さい子どもが「なんで、なんで?」と聞くように、つながって、そして戻ってくる。過去を知らない限り未来はわからないし、過去の出来事が因果関係で現れてくるというのが歴史の本質なので連鎖というのはとても重要です。

第1シリーズでは、意図的にそのことを描いてはいなかったけれど、「新・映像の世紀」が連鎖を色濃く打ち出しているので、そうした視点でも見ていただけたらいいですね。

  • 1
  • 1

Title

20年前の「映像の世紀」の制作者として新作をどう見たのかは気になります。今回はもう少し人間にズームインするということ、歴史の連鎖を描くと聞いていたので楽しみにしていました。それが見事に表現されていた73分間でした。ワクワクしながら一視聴者として素直に楽しめました。

Title

前作に付加価値をつけたいというのは当たり前の話だし、20年前より技術的にも映像収集力も高くなっているので、担当者は当然のことながらインパクトのある差別化をしたいと思うはずです。前作では簡単に触れるにとどまっていたことを、新シリーズではズームインしている。第1集でいえばアラビアのロレンスから毒ガスを発見した科学者、そしてレーニンまでを第一次世界大戦という舞台にしっかり上げて、そのこと自体が歴史の連鎖を生み出しているということがよく描けていました。

科学者が発明した毒ガスは、ベトナム戦争の時代から現在の中東の内戦でも使われているし、ロレンスの裏切りが中東の火種になったという連鎖が出来ている。中東は同じ事を何回も繰り返しているけれど、それはすべて大国のエゴで、あの時もイギリスのエゴが生み出している。そういう連鎖を二つ、三つとズームインしていて、第1シリーズとよく差別化されていると思いました。前作は歴史のメインの動脈部分を描くことに徹しましたが、新作はさらにディテールをクローズアップしていく考え方というのがよく伝わったと思います。

    Title

    かつてのヒットしたシリーズものを新しく制作するときの宿命ですね。昔の音楽とナレーション、空気感に浸りたいというのは、ファンであればあるほど望むことです。学生時代に通ったカレー屋さんを訪ねたら、昔と違ってしゃれたお店になっていて裏切られた気分になったり、久しぶりに戻ったふるさとの変化にがっかりするのと同じではないでしょうか。

    もちろん20年前の前作に愛着を抱いていただけるのはうれしいことです。でも、新作は、編集のスタイル、ナレーションのスタイルなど、20年前には実現できなかったことをやろうとしている。そして何よりも、21世紀の今の時点だからこそ、世界がこうした不安定な状況になっている今だからこそ放送する価値があるんじゃないかと思っています。

    • 1