NHKスペシャル

シリーズ TOKYOアスリート 第4回
競泳 私たちが“エース”だ

内村光良と南原清隆が、東京五輪でメダル獲得が期待されるアスリートに迫る、シリーズ「TOKYOアスリート」。第4回は、五輪で80個ものメダルを積み上げてきた、日本のお家芸「競泳」。五輪本番を控えた今年、競泳日本代表は、萩野公介選手と池江璃花子選手の両エースが離脱するという激震に見舞われた。かつてない逆風のなか、“新エース”に名乗りを上げたのが、瀬戸大也選手(25)と大橋悠依選手(23)。東京五輪の前哨戦となったこの夏の世界選手権で、男女のキャプテンに就任し、瀬戸選手が金メダル2個、大橋選手が日本女子唯一のメダルとなる銅メダルを獲得するという、堂々たる結果を残してみせた。しかしこの二人、これまで決してエリート街道を歩んできたわけではない。瀬戸選手は同学年の萩野選手という絶対的存在を追いかけ続け、大橋選手は大学4年生で初めて日本代表に選出されるという異例の遅咲き。ともに、誰にも真似できない独自の泳ぎを追求し、這い上がってきた。番組では、最新の特殊撮影で強さの秘密を徹底解析するとともに、大きな期待と重圧のなか、もがき苦しみながらTOKYOの頂点を目指す、挑戦の日々に密着。競泳ニッポンの命運を託された、男女の“新エース”の覚悟と素顔に迫る。

放送を終えて

速く泳ぐためには腕をより多く回し、より力を入れて泳ぐ。当然のように思っていた私の常識は今回の主人公の一人、大橋選手によってひっくり返されました。一見、ゆったり泳いでいるように見えるのにぐいぐい進む。それは一体なぜなんだろう。特殊撮影を通して、誰にも真似できない高度な技術が明らかになっていきます。さらにその技術の源に迫ると、目の前のことをこつこつとやりきる彼女の人柄が見えてきました。“アスリートが持つ技術にはアスリート自身が投影される”。そんなことを確信できた貴重な取材期間でした。
東京五輪はもう来年。番組を通して少しでも選手のすごさや競技人生に興味をもってもらいたい。そしてそんな選手達に思いを乗せて、共に忘れられない東京五輪の1シーンを迎えられればと願っています。
ディレクター 松本恵介

競泳日本代表の“新エース”と呼ばれる瀬戸大也選手と大橋悠依選手。実績十分の二人ですが、私が惹かれたのは決してトップを走り続けてきたわけではない競技人生でした。自分の“弱さ”を“結果”として突きつけられるアスリートの宿命。そのとき何を考え、どう乗り越えようとしてきたのか。もがき続けてきたからこその二人の答えは、様々な日常を送る人たちにも響くメッセージだったのではないかと思います。
大切な時期に取材に誠実に対応してくれた二人に感謝するとともに、来年の東京五輪、そしてその先の選手生活でそれぞれの夢を叶えられるよう願っています。
ディレクター 滝川一雅