NHKスペシャル

“黒い津波” 知られざる実像

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東日本大震災は、膨大な津波の映像が克明に記録された、初めての大災害だった。陸地に到達した当初は透明だった津波が、そのわずか5分後には真っ黒な色に変わっていた。 “黒い波”はどのように生まれたのか?震災から8年、最新の研究で、その正体が次第に明らかになってきた。巨大津波が入り組んだ湾に進入すると、湾の狭くなった場所に津波の勢いが集中し、海底の土砂を深くまでえぐりとる。宮城県気仙沼市では、津波が海底を7mもえぐり、大量の土砂を巻き上げ黒い波となっていたことがわかってきた。
当時のまま保管されている黒い海水を専門家が分析したところ、純粋な海水のみだった場合に比べ、黒くなったことで津波は強い破壊力を持ち、人々の命を奪っていった実態が明らかになった。黒い波は、より多くの建物を破壊し、がれきを巻き込み、このがれきがさらなる大量破壊の連鎖をもたらしていた。また、亡くなった人たちの「死因」について、これまでは9割が溺死とされてきたが、法医学者などは、土砂による窒息やがれきによる圧迫死など、複合的な原因もあったのではないかとみて、再調査を進めている。
多くの人たちが異口同音に“黒い”と言い表してきた、巨大津波の真の姿。最新の解析や調査結果を当時の映像や証言と照らし合わせ、黒い波の脅威を初めて明らかにする。