NHKスペシャル

朝鮮戦争 秘録 ~知られざる権力者の攻防~

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去年行われた韓国と北朝鮮の首脳会談で、ようやく「終結」に向けて動き出した朝鮮戦争。
1953年に休戦協定が結ばれたが平和条約の締結には至らず、依然として“戦争状態”が続いている。当時、アメリカ・ソ連・中国といった大国の思惑が複雑に絡み合って始まった戦争は、なぜ長期化し、いまだに終結できずにいるのか。NHKは、その謎を解く手がかりとなる秘密文書を独自に入手した。スターリン、毛沢東、キム・イルソンの間で交わされていた電報や直筆の手紙、そして極秘会談の記録だ。見えてきたのは、スターリンが北朝鮮に韓国への侵攻を決断させ、中国を巻き込んで戦争を泥沼化させていった、指導者たちの間のしたたかな“駆け引き”だった。
さらに今回、アメリカ側からも、朝鮮戦争の未公開映像や機密文書を入手。300万人もの死者を出した凄惨な戦いの現実と、アメリカを主体とする国連軍の後方支援に、日本の船舶も駆り出されていた事実が浮かび上がってきた。朝鮮半島を南北に分断し、冷戦崩壊後も各国の“相互不信”が渦巻き、不安定な状況が続く北東アジア情勢。「終戦宣言」をめぐり米朝の駆け引きが続く今、朝鮮戦争の知られざる歴史を紐解く。

放送を終えて

放送から3日後、アメリカ・トランプ大統領は、2回目の米朝首脳会談の開催日と場所を発表した。2月末、かつてアメリカと戦火を交え、今は目覚ましい経済発展を続けるベトナムの地で、「朝鮮戦争の終結宣言」は行われるのか。その場合、「在韓米軍」の位置づけはどうなるのか。さらに最大の焦点である「非核化」は進展を見せるのか。先行きは、全く見えない。

朝鮮戦争の終結は、北東アジアに真の平和と安定をもたらすものなのか
それとも新たな権力者たちによる駆け引きの始まりなのか

番組では、最後のナレーションをこう締めくくった。北東アジアはどこに向かうのか。
まさに我々は今、分岐点に立っていると感じている。

報道局 政経・国際番組部 ディレクター 花井利彦

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放送を終え、周囲から聞こえてきた声は、隣国の戦争について、あれほどまでに大規模であったことを知らなかったこと、「朝鮮特需」として経済的な側面でしか認識していなかったこと、そして日本は犠牲者までうむ支援、加担をしていたことへの驚きだった。
元兵士や日本人関係者の取材をすると、現場はイデオロギーや策略とは別の悲惨な現場がみえてきた。元北朝鮮兵士も「戦争はダメだ」と言っていたことが印象に残る。
米朝会談では終戦宣言まで至るのかが注目を集める中、日本がどういった姿勢でいるべきか、どんな役割を果たすのか、ここからは現代を生きる我々が作る歴史である。番組で、戦争の教訓を我がこととして、そして終戦後の私たちの生き方をも想像してくれたらと願っている。

報道局 政経・国際番組部 チーフディレクター 安部康之