NHKスペシャル

ニッポンの家族が非常事態!? 第1集
わが子がキレる本当のワケ

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「母親たちが子育てに苦しむ本当の理由は、人類の進化にある」というメッセージで大反響を呼んだNHKスペシャル「ママたちが非常事態!?」(2016年1・3月放送)が、新たなニッポンの家族の問題に最新科学で斬り込む!今回は、思春期の子どもたちの暴走と、急増する離婚の深層に、2夜連続で迫る。
第1集のテーマは「思春期の異変」。可愛かったわが子が急に反抗的になり、親を戸惑わせる思春期だが、最近子どもたちに“うつ”や自殺、いじめなどが増加し、社会問題になっている。その原因を最新科学で探ると、意外にも人類が進化の過程で獲得した「特別な仕組み」が深く関わっていることが分かってきた。厄介に思える思春期の問題行動だが、人間が高度に脳を発達させる上で、極めて重要な意味を持っていたのだ。しかし現代では子どもを取り巻く社会環境が急速に変化し、思春期特有の脳の働きが子どもたちを追い詰めていることが明らかに。インターネットなどが思春期の子どもに与える思わぬ影響にも、科学的な実験を交えて迫っていく。

放送を終えて

前作の「ママたちが非常事態!?」を制作していた頃から、次は思春期をテーマにしたいと考えていました。制作メンバーの中には、子育てに奮闘するお母さんが何人かいるのですが、「大変なのは乳幼児期だけじゃない。思春期はもっと大変なのよ~」という苦悩を切々と聞かされていたからです。
苦労したのは、多感な年頃の若者の取材はもちろんですが、思春期に関する科学研究の少なさでした。実はつい最近まで科学者の間で、「思春期の若者の脳は大人の脳に準じるものであり、詳しく研究するまでもない」という先入観があったとも聞いています。しかし一部の研究者たちによって「思春期の脳では人生最大とも言える神経ネットワークの再編が起こっている」、「脳が環境の影響を非常に受けやすい時期であり、心の病を発症しやすい」など、重要な事実が突き止められたことで、今や非常にホットな研究分野になりつつあります。そんな最新の科学情報を分かりやすく盛り込みながら、「思春期のわが子への対応に苦悩する親たちの心がふっと軽くなるように」という願いを込めて、番組を作りました。
育児の苦悩、思春期の暴走、夫婦不和と様々なテーマを科学によって解き明かしてきたこのシリーズですが、「次はこれを取り上げて欲しい」との声も多く寄せられています。さらなる続編の実現を目指し、これからも頑張ります。

制作局 科学環境番組部  兼子将敏