NHKスペシャル

命と向きあう教室 ~被災地の15歳・1年の記録~

「命は、強くて弱い、美しいもの。でも僕は答えを出せていません」(東日本大震災で母と姉を亡くした男子生徒の作文)。
震災から4年。宮城県東松島市の鳴瀬未来中学校の3年生82人が、1年間かけて授業で「命」と向きあっている。震災を体験した生徒同士が、毎月1回、作文を発表し、それに対する感想を伝え合う。親しい人を失った悲しみを誰にも打ち明けられずに抱え込み、心にふたをしているように見える生徒たちを心配した教師が、児童心理や教育学の専門家と相談しながら始めた。涙ながらに体験を吐露する友人に同級生が言葉を掛け合う命の授業は、心のケアにつながる可能性があるだけでなく、人が抱える痛みに思いをはせ、いたわり支えあうという、人として最も大切なことを学ぶ場にもなろうとしている。
卒業式、そして3月11日をへて、それぞれの未来へ一歩踏み出すまでの15歳の1年を見つめる。

【語り 高畑充希】

放送を終えて

肌で感じながら、なかなかうまく表現出来ない「空気」というものがあります。仙台放送局で3年被災地の取材をしながら、いつももどかしい思いをしていたのが、今、3年、4年と時間が過ぎる中で、被災地に暮らす人々にとっての震災との距離感の「空気」でした。日本のどことも変わらない、喜怒哀楽のある日常を送りながら、すぐ隣り合わせにある「震災」。悲しく、できれば思い出したくないものでありながら、心の奥のある部分を占め続ける「震災」。いつもは、テレビカメラでの撮影という非日常の空間で、インタビューや取材を行うことになり、中々その「空気」を描くことができませんでした。今回は、教室という場に何度も通う中で、率直で飾らない子どもたちの力で、その「空気」が少し描けたような気がします。できれば口にしたくない、でも忘れることはできない、随分遠くの出来事のようでもあり、まだまだ最近の出来事でもある。4年というある意味「中途半端」な月日は、しかし、私たちがどう「震災」と今後向きあっていくのかの分岐点でもあるように思いました。そのような現場にカメラが入る事を許してくれた先生と生徒達に改めて感謝の気持ちを伝えたいと思います。

(仙台放送局 荒井拓)