NHKスペシャル

北朝鮮 権力とカネの謎

世界に衝撃を与えた北朝鮮でのチャン・ソンテク氏の粛清。キム・ジョンウン第1書記の叔父でありながら、なぜ死刑に処せられるという前代未聞の事態に追い込まれたのか。背景には、最高指導部が権力を維持するための資金、「統治資金」を巡る激しい争いがあった。
北朝鮮には、社会主義に基づく計画経済とは別に、内実が闇に包まれたもう1つの経済システムが存在する。北朝鮮から逃れた人たちは、それを「宮廷経済」と呼ぶ。「宮廷経済」では、朝鮮労働党や軍の傘下にある企業、さらには外交官たちが、世界中で手掛ける合法・非合法のビジネスで外貨を獲得し、最高指導者に収める。その外貨が「統治資金」だ。指導者は、その資金で外国製の高級車や時計、ワインなどのぜいたく品を調達して、部下にプレゼントとして贈る。そうした独特の資金の還流は、忠誠心の維持のために欠かせないシステムとなっている。チャン氏は、「統治資金」の元となる外貨を自らのもとに集め、管理する「小王国」を構築し始めたとして処刑されたのだ。
今も様々な手段で「統治資金」を得ようとする北朝鮮。一方、国際社会は制裁措置を科し、その資金獲得とぜいたく品の調達を阻止しようと監視の網を縮めつつある。番組では、世界各地で進めた取材をもとに、秘密のベールに包まれてきた北朝鮮の「統治資金」の実態を追う。