NHKスペシャル

シリーズ東日本大震災 逆境からの再出発
~高齢者を支える医師たちの挑戦~

医師の絶対数が不足し、震災前から医療崩壊の瀬戸際に立たされていた東北地方。2年半前の震災で多くの病院が流され、事態は深刻化していた。さらに、若年層が流出して高齢化が進み、将来、日本全体が直面することになる「超高齢社会」がひと足早く出現。複数の慢性病を抱え、病院に通うことも難しい場合が多い高齢者への医療をどうするかが大きな課題となっていた。
しかし、震災という逆境を機に改革の動きが始まった。超高齢化に対応できる医療の形を模索していた医療者たちが東北に結集し始めたのである。宮城県石巻市では、震災前にはほとんどなかった「訪問診療」が爆発的に増え、高齢者が自宅にいながらにして総合医に診てもらえる体制が整い始めた。津波に洗われゼロからの再スタートになった岩手県陸前高田市では、医療と福祉が連携しながら高齢者を支える「地域包括ケア」の構築が一気に進んだ。こうした新時代の医療を担うことができる医師を、被災地が連携して育てようという試みも始まろうとしている。
被災地が、超高齢社会を見据えた医療の先進地帯に生まれ変わろうと歩み始めた。個々の被災地の「点」から「線」、そして「面」にまで広がろうとしている医療再生の動きを記録する。