NHKスペシャル

職業“詐欺” ~増殖する若者犯罪グループ~

「今の日本、勝ち組か負け組かどちらかですよ。この格差社会で勝とうと考えたら、振り込め詐欺が一番近道ですよ」―――詐欺師たちはカメラの前で平然とこう語った。
警察の厳しい取締りにもかかわらず一向に減らない振り込め詐欺。去年の被害額は276億円、5年間の累計では1300億円を超えた。実行犯は20代の若者がほとんどで、有名大学や一流企業の出身者も多い。詐欺を「仕事」、実行犯を「従業員」と呼び、友人、知人を“高給”でスカウトし組織化を進める。「騙される方がバカ」と悪びれず、高級マンションや外車を購入、「金こそ全て」の生活を送る。逮捕のリスクが高い犯行は、安い報酬で雇った生活苦の失業者を使うなど極めて悪質だ。雇用環境が悪化する中、これまで犯罪とは無縁だった人々が「明日の生活費が欲しい」と、振り込め詐欺組織の下働きをする構図が生まれている。
若者たちはなぜ詐欺に走ったのか。その軌跡を徹底的に取材し辿っていくことによって、日本社会の抱えるいびつな病理を浮かび上がらせる。