NHKスペシャル

北極大変動 第1集 氷が消え悲劇が始まった

北極圏を地球温暖化が襲い、氷が急速に消失しつつある。ホッキョクグマに発信器をつけて行動を追跡すると生態系の危機が浮かびあがってきた。さらに地球の気候の安定も脅かされている。北極で異変の連鎖を追う。

<詳細>
70センチ、ロシアの科学者が北極点近くで取り出して見せてくれた氷の厚さである。かつては、4メートル以上もあった北極点の氷が、大幅に薄くなっているのだ。
北極海の氷の面積も、2007年9月には1980年の6割以下に縮小、観測史上最小を記録した。その原因は、人間が排出したCO2によって進む、地球温暖化である。北極圏では、地球上のどこよりも急激に環境の大変動が進んでいるのだ。

北半球最大の氷床を持つグリーンランドでも異変が起っている。氷河にいくつもの巨大な穴があき、夏、大量の水が滝となってその穴に落ち込んでいる。この水が氷河の下に入り込み、その流出を加速しているのだ。グリーンランドの氷が全て解けると世界の海面は6メートル上昇するといわれている。
この氷の減少の影響を真先に受けているのが、北極圏の生態系だ。ホッキョクグマの王国と呼ばれてきたスバルバル諸島では、氷がないためにえさとなるワモンアザラシが少なくなってしまい、ホッキョクグマの親子に過酷な運命をもたらしている。

さらに、北極圏の温暖化は、地球全体の気候にも重大な影響をもたらす。最新のシミュレーションでは、北極圏の海洋や陸の変化によって、大気中のCO2を吸収する能力が減少し、温暖化にさらなる拍車をかけることがわかってきた。

地球の気候変動の鍵を握る、北極。科学者たちの観測に同行取材し、北極で起きている大変動に迫る。