NHKスペシャル

食の起源 第5集「美食」
~人類の果てなき欲望!?~

「本当に人を健康で幸せにする“理想の食”って何?」そんな疑問の答えを、人類と食との“壮大な歴史”と“驚きの進化”から解き明かすシリーズ「食の起源」(全5回)。食にこだわりを持つTOKIOをナビゲーターに知られざる“食の真実”に迫っていく。最終回となる第5回のテーマは「美食」。どんな生物も「生きるために食べる」が、人間は健康を害してまで「おいしいもの」を欲して食べ過ぎてしまう、まさに「美食モンスター」!なぜそんな奇妙な進化を遂げてしまったのか?その壮大な歴史をさかのぼると、人類の祖先が生き延びるために獲得した「3つの特殊能力」が、現代人の「奇妙なおいしさ感覚」を生み出していることがわかってきた。なぜか「毒の苦味」や「におい」だけで食のおいしさが劇的に変わる不思議なスタジオ実験なども交え、単なる栄養摂取を超越した「人類の食」の神髄に迫る。いよいよ「あなたを健康で幸せにする“理想の食”」への道が見えてくる!?

放送を終えて

 私「お母さんのごはん、おいしい?」
 6歳の娘「おいしー(棒読み)」
 4歳の息子「おいしくない!キノコいや!」
 反抗心溢れる、食卓での会話。子ども達も私も疑問なく「おいしさ」を判断して口にしますが、一体全体、「おいしい」とは何なのか。なぜ人はおいしさを追い求めるのか。その答えを人類の進化から探るという難題を、何でもおいしいと感じる凡庸な舌を持つ自分が解き明かせるのか…。一抹ならぬ“百抹”の不安と共に取材を進めました。
 ところが調べてみると、世界各国で心躍る最新の研究結果が次々と発表されていることを知ります。「遺伝子が味覚の感度を決めている」「嗅覚なくしておいしさなし」「いつの間にか祖先は“グルメな骨格”に進化していた!?」など、つい誰かに話したくなるトピックばかり。そう、ゲノム解析や脳科学研究のレベルが格段に上がった現代では、これまで数多の研究者達を煩悶させてきた“おいしさの謎”が次々と解き明かされ、全世界注目のホットな研究分野となっていたのです。
 そして1年をかけた番組制作で見えてきたのは、か弱き祖先が生き残るためにあらゆる食の「おいしさ」を吟味し、時には命を懸け、時に裏切られるもその魅力にまた酔いしれる、地球上に生きるどの生物よりも食との蜜月を深く重ねてきた壮大な歴史でした。
 5回シリーズの最終回を担当するにあたり、いかに「心地よく」観終わっていただけるかを念頭に置いて制作にあたりました。そのために、「食への探求心が高まる研究」「食への愛慕を感じる現場」を厳選してお伝えしようと心掛けましたが、番組をご覧になった方が、祖先の歩みに想いをはせ、日々の食への愛しさをより一層深めていただけたとしたら…これほどの喜びはありません。

ディレクター 捧詠一