NHKスペシャル

“ふたり”ならもっと強くなれる ~「絆」で目指す世界の頂点~

あなたは想像できますか?真っ暗闇のなか、100mを10秒台のスピードで駆け抜ける世界、そして42.195kmを3時間もの間走り続ける世界を。
その想像を絶する世界を作り上げるのが、パラ陸上で視覚障害のある選手と隣でガイドする伴走者だ。二人をつなぐのは、長さ10cmほどのロープ、その名も「絆」。暗闇のなか、転倒やけがのリスクと隣り合わせの走りを支える命綱であり、究極の信頼関係が必要だと言われている。番組では、100mで驚異的なシンクロを成し遂げるアメリカペア、そしてマラソンで心と心をつなぎ合う日本ペア、日米2組の世界記録保持者に密着。そこには、一人では届かない世界に、二人でたどり着こうと格闘する、壮絶なドラマがあった。東京パラリンピックまで、あと1年。ドキュメンタリーと最新科学で、究極の「絆」に迫る。

放送を終えて

「一人では届かない世界も、二人ならきっとたどり着ける」。
今回のNHKスペシャルで伝えたかったことは、このコメントに尽きます。東京パラリンピックまで1年となったタイミングでの放送で、主人公は視覚障害のある選手と伴走者、日本ペアとアメリカペアの2組。まさしく“一心同体”となって走る選手と伴走者、二人の間にある信頼関係は、パラリンピックやスポーツという枠を超えて、私たちの日常の様々なシーンにも通じるものだと思います。家族、夫婦、恋人、友人、上司と部下…。いつ、どんなときでも、人と人がつながり、関係を深めようとするとき、大切なことは変わらないはずです。私たちは、一人一人が、誰かの“伴走者”であり、誰かが私たちの“伴走者”となってくれています。何かを成し遂げたいと思うとき、誰かの力を得ることができれば、その実現は決して遠いものではなくなるということも、今回の主人公の姿を見ていると強く感じました。
パラリンピックも、オリンピック同様、大舞台にたどり着くまでには、選手たちの並々なら努力があります。今回の番組をきっかけに、来年、パラリンピックを見に競技場に行きたいという人が増えれば、番組制作者としてはこれ以上ない喜びです。

ディレクター 橋場慎