NHKスペシャル

知床 シャチ 謎の大集団を追え

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世界自然遺産 北海道知床。この海には、毎年春から夏にかけて、シャチの群れが頻繁に訪れる。しかし、どこから何のためにやって来るのか?いったい知床の海で何をしているのか?その生態は全くと言っていいほど分かっていない。その謎に迫ろうと、国内気鋭のシャチ研究者たちとともに、2年にわたって追跡取材。高精細ドローンカメラや深海用の特殊カメラなどを駆使し、知床に現れるシャチの大集団を追った。今回取材班は、世界的にも珍しい、100頭近くに及ぶ大集団に遭遇!いったいなぜ大集団を形成するのか?その謎を追う中で見えて来たのは、高度な知能と家族を慈しみ合いながら生きる姿だった。美しい自然あふれる知床の海で、命をつないでゆくシャチの知られざる生態に迫る。

放送を終えて

シャチは、海洋ほ乳類の研究が進む欧米を中心に、世界中で絶大な人気を誇る動物です。そのシャチが世界屈指の密度で生息する海が、北海道にある。しかも、港を出てものの数分で出会えることも。制作者として、これほどわくわくする現場はありません。「今日はどの家族に出会って、どんな行動が見られるだろう?」と、胸を躍らせながら出港する毎日でした。しかし同時に、撮影にはたくさんの困難も。シャチは1日100キロ以上も泳ぎ回り、数十分間、深い海へ潜ってしまうこともあります。シャチがご機嫌ナナメの日には、群れを探すのも、ついていくのも一苦労です。
撮影を成功に導いたのは、研究メンバーの一人、斎野重夫さんと、船長・ガイドのみなさんです。極寒のデッキに、1日10時間以上も仁王立ち。並外れた集中力で水平線をにらみ続けます。5キロ先にひょこっと突き出たシャチの背びれを見逃しません。そして、シャチの生活を妨げないよう、絶妙な距離感を保ち続けます。絶対に真似できない、まさに職人芸です。
そして地元・羅臼町のみなさまに、いつも暖かい激励のお言葉をかけていただき、おかげさまで今回、学術的にも貴重な映像を撮影することができました。しかし、謎の解明は始まったばかりです。シャチはこれからも、私たちの想像もしなかった姿を見せ、驚きと感動を与えてくれることと思います。
番組を通して、知床の美しい大自然、そこで命をつなぐシャチの神秘的な姿、その一端を堪能していただけたら幸いです。

番組ディレクター 重田竣平