NHKスペシャル

届かなかった手紙 時をこえた郵便配達

太平洋戦争中、戦場の兵士と故郷の人々の間を行き交った「軍事郵便」は、年間4億通に達した。ところが戦況が悪化するにつれ、“宛先に届かない”手紙が増えていった。米軍や豪軍に押収され、その多くは返還されなかったのだ。検閲に配慮しながら、死と向き合う極限状態の中で紡ぎ出された、家族や友人への愛情にみちた言葉の数々。しかし兵士たちが手紙に託した切実な思いは行き場を失い、70年以上の長きにわたって彷徨っている。
いま、そうした“未配達の手紙”が国内外で次々と見つかっている。手紙を押収した米兵や豪兵が亡くなり、インターネット・オークションで売りに出されているのだ。兵庫県の団体が集めた17万通の戦時中の手紙を調べたところ、数十通が未配達と分かった。また日本の研究者らは、海外各地の文書館を調べ、計100通を超す未配達の手紙を発見した。
番組では、宛先の遺族や関係者を探し、70年余りの時を経て初めて手紙を届ける。配達先で見えてきた、手紙に秘められた様々なドラマから、知られざる戦争の一断面を描き出す。

  • 高良健吾