NHKスペシャル

AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン

「どうしたら心配のない老後を迎えられるの?」「何をしたら、子育ての環境はよくなるの?」「幸せに暮らすにはどうしたらいいの?」「どうしたらニッポンの未来は明るくなるの?」といった、私たちが感じている疑問や難問。その解決策のヒントを、AI(人工知能)が導きだし、従来にはない「一手」を考えていこうという新たなシリーズのプロローグ。NHKでは、人口動態や介護、医療、格差、消費など様々な社会を映し出す5000を超える公共のデータを入手。「風が吹けば桶屋が儲かる」といった具合に、複雑に、間接的に影響し合っているそれぞれのデータの関係性をAIが解析し、日本の社会構造を詳らかに分析した。その結果、日本を変えるカギを握っているのが、高齢者でも子どもでもなく、「40代ひとり暮らし」であることが判明。労働時間や老後の介護、空き家問題などを良くするのも悪化させるのも、「40代ひとりぐらし」の人たちの選択にかかっていることが見えてきた。さらに、大学や研究機関が持っている、匿名の個人1万人を追跡調査しているデータも解析したところ、幸せに暮らすための意外な条件や、若者世代に芽生えている、従来にはない価値観が明らかになるなど、これまで注目されてこなかった「一手」が見えてきた。AIが解析した内容を、スタジオでたっぷり味わっていく。

  • マツコ・デラックス,有働由美子

放送を終えて

日本社会に横たわる様々な問題。その解決の糸口を、専門家とは異なる視点から考えてみたい。その分析をAI(人工知能)に委ねたらどうなるだろうか―。

そんな思いから、番組の制作がスタートしました。

これまで「NHKスペシャル」では、社会問題解決のヒントを幾多の専門家・研究者の皆さん、さらに問題を抱える現場や、当事者として解決に奮闘されている市民の皆さんにも取材させて頂きました。

そのひとつひとつが調査・研究の積み重ねであり、同時に現場の試行錯誤の末に導き出された方法であることは紛れもない事実です。しかし、それを踏まえた上で、“失われた20年”といわれる社会の閉塞感を打ち破るには、もうひとつ別の視点や気づきが必要なのではないか。そのために「公共放送」としてAIの開発に挑戦しようということになったのです。

社会課題の解決を目指すAIの開発は、これまでにない試みでした。そのため、人口動態統計や産業動向調査など、5000種類、計700万件超を超える公的データをAIにインプットしました。今回のAIでは「1つ1つの項目ごとの相関」を分析するのではなく、5000種類のデータ全体を見渡し、その中でのそれぞれの関係を「パターン認識」などのAI特有の分析手法によって出しています。

また、AIは、因果関係があるかどうかまでは教えてくれません。そのため、その分析結果から読み解いた内容を平易な言葉に置き換えた「提言」として番組で紹介し、AIの分析結果の背景はどこにあるかを読み解き、社会問題解決の新たなアプローチとして番組にまとめました。

初回の放送は、前編・後編計2時間超の番組となりましたが、多くの皆さんに番組をご覧頂き、大きな反響を頂きました。担当として厚く御礼申し上げます。

番組は、今後、2020年まで3年間かけてシリーズを放送していく予定です。皆さんのご意見を頂きながら、AIも進化させていき、より社会の役に立ち、楽しんで頂ける番組作りを目指します。AIとともに、番組もぜひ、温かく見守って下されば幸いです。

ディレクター 神原一光