NHKスペシャル

シリーズ MEGA CRISIS 巨大危機
~脅威と闘う者たち~
第4集 “地震大火災”があなたを襲う
~見えてきた最悪シナリオ~

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「MEGA CRISIS 巨大危機」の第4集は、近い将来に発生が予測される“南海トラフ巨大地震”や“首都直下地震”で最も恐れられている、“地震大火災”の脅威に迫る。 阪神・淡路大震災で神戸の住宅街を焼き尽くした大火災。東日本大震災で気仙沼沿岸を襲った津波による火災。関東大震災以後も、現代日本は大地震による火災の脅威に幾度も打ちのめされてきた。しかし今後起こりうる大地震では、最悪の場合、さらに過酷な“未曽有の大火災”が都市を襲う危険性が浮かび上がってきている。国の中央防災会議の予測によれば、首都直下地震での死者は首都圏全体で最大2万3千人。そのおよそ7割は「火災による死」だ。最新研究から、犠牲者増大の要因が、人口過密都市特有の“逃げまどい”という現象にあることが分かってきた。目に見える炎や煙、群集の移動に惑わされて避難が遅れ、同時多発火災に取り囲まれてしまうのだ。さらに、南海トラフ巨大地震では、津波によって大阪など大都市湾岸部のコンビナートが破壊され、可燃物が津波と共に都市内陸まで到達。「津波火災」を引き起こす危険性が指摘されている。これらの大火災は、消防能力をはるかに超える“消せない炎”となって都市を襲う。その時私たちはどんな危機に直面するのか?どうすれば命を守れるのか?最新シミュレーションやバーチャルリアリティー(VR)技術を駆使し、最適な“避難行動”を導きだそうと挑む研究者がいる。また東京湾では、東日本大震災の時に起きたコンビナート爆発火災を教訓に、特殊消防のプロたちが厳しい訓練を繰り返している。“消せない炎”の脅威に立ち向かう最前線を見つめる。

放送を終えて

地震火災は人間が作り上げた“人災”かもしれない。
番組の取材の過程で地震火災について理解を深める中で感じたことです。そもそも自然界では、地震が起きてもそれが原因で火災が発生することはほとんどありません。人間が作り上げた電気やガスなどのエネルギーが、地震の揺れをきっかけに火災を引き起こし、建造物や都市を燃やしてしまうのです。
その最たるものの一つが、番組で取り上げた「コンビナート火災」です。私たちの便利な暮らしを支えるためにコンビナートに蓄えられた大量の化石燃料が、ひとたび牙をむくと、消防能力をはるかに超える大火災を引き起こしてしまいます。

このコンビナート火災を含む地震火災から命をどう守っていくのか?私たちはもっと深く考えなければならないと強く感じました。地震火災という言葉を聞いたことすらない、という人も多くいるかと思います。私自身取材を始めるまでは、地震後の火災で命を失う危険があることなど全く考えたこともありませんでした。地震火災への対策が十分に行き届いているとは言えない現状の中、今回の番組が対策に向けた議論を進めるための一助となることを願っています。

ディレクター 松舟 由祐