NHKスペシャル

私たちのこれから #超少子化 
安心子育ての処方せん

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日本の未来の姿をシミュレーションし、対策を探る「私たちのこれから」。今回のテーマは少子化。50年後の人口が8600万人にまで減るという日本、国の研究所は1億人の維持には、2030年に出生率1.8、その後2.0が必要としている。しかし、現在は1.42、さらに男女の未婚が進み、出産どころか結婚から遠ざかる人が増えている。大きな理由の一つは金銭的な余裕のなさ、背景には非正規雇用の増加があるとする専門家も多い。このまま少子化が続けば働く人の数が減り、経済は失速、「先進国から脱落する」ともいわれている。大切なのは、子どもを産み育てたいという希望をかなえるための環境整備。番組では、子育て支援の「お金」や、長時間労働や育休など「働き方」の問題について、市民と専門家を交えて徹底討論、安心して子育てができるようになるための処方せんを探る。また、放送中に視聴者参加を呼びかけ、番組中の「気になる場面」などを選ぶ「ライブ投票」を実施、ツイッターやメールで寄せられる意見や質問も紹介し視聴者の皆さんと一緒に考えていく。

放送を終えて

 市民参加型の討論番組「私たちのこれから」。シリーズ第4回目は「超少子化」をテーマに、なぜ日本は少子化に陥り、対策が20年以上も対策が打たれながらも、出生率が低迷しているのか。安心して子どもを産み育てられる社会になるための解決策を探りました。 
「結婚したいし、子どもも産みたいけど、お金がすごくかかる。経済や仕事も不安定な中で、親になれる自信がない…」。
「パパに子育てを手伝って欲しいのに、毎日遅くまで残業して出張もバンバン。会社は、パパを家にもっと帰して欲しい…」。
 討論で、女子学生や子育て中のママから、思わず飛び出した本音です。
 私自身も、2人の子どもを育てる中で、子どもを朝、保育園に送り届けることはできても、迎えに行けた試しはなく、どこか歯がゆい思いを感じていました。
 こうした人たちの思いの先に、今回のテーマがあったように感じています。
 では「超少子化」に歯止めをかけるには、どうしたらいいのか。「結婚したい」「子どもも欲しい」という希望がありながら、それを実現することができない人たちへの抜本的な対策は何があるのか。
 その解決の糸口として、「少子化」という「大きな現象」から対策を考えるのではなく、父親や母親になりたいと願う「若者」や、産まれ育つ「子ども」の環境は本当に整備されているのか、といった、いわば「個別の現象」から対策を再構築することが、重要なのではないかと考えます。
 対策の「主語」を「少子化現象」から「若者・子どもの環境」に変える必要があるのではないかということです。
結婚や出産、子育ては個人の選択の自由です。しかし、その結果として「晩婚・晩産」化したことが少子化の原因ととらえられる時代は終わりました。
いまは、結婚したくても、子どもを産み育てたくても、経済的な理由などからそれが叶えられない不本意な「未婚・無子」化が進んでいます。少子化は、これまでとは別次元の局面に突入しています。
個人の選択の自由。その幅が、むしろ狭まっている。自由な選択ができない状況にある、と考えるのが適切ではないかとすら思える状況があるのです。だからこそ、対策の「主語」を変えることが重要だと思うのです。
 パパ、ママ、そして日本社会が、どうしたらもっと赤ちゃんを大事にできるのか。
 放送中、視聴者の皆さんの「思い」が、まるで「うねり」のように番組に寄せられました。生投票には、3万人を越える方が参加。「気になるボタン」投票は、なんと94万回を越える反響、そしてツイッター・番組HPからは、放送中2万件を越す質問・意見を頂きました。心より、御礼申し上げます。
 番組に出演した社会学者・古市憲寿さんは、こんな提言を番組に残してくれました。
「もし、日本があと20年で終わると決まっていたら、別に子どもに対して何にもしなくていいですけど、日本はこれからも続いていくわけですから、国が子どもたちに対して責任を持たないといけないんじゃないか」。
 古市さんのおっしゃる通り、日本は、平和である限り、これからも、ずっと、ずっと続いていきます。
 内閣府がまとめた「少子化社会対策白書」の中にこんな言葉がありました。
 「少子化は、克服できる課題である」。
 国には、改めて「建前」や「スローガン」だけではない財源や実行力を伴った大胆な政策と、異次元の政治決断が求められていると感じます。
(ディレクター 神原一光)