NHKスペシャル

司馬遼太郎思索紀行 この国のかたち
第1集
“島国”ニッポンの叡智(えいち)

2016年2月、没後20年を迎え、今も幅広い世代に読み継がれている国民作家・司馬遼太郎。日本、そして日本人とは何か?終生問い続けてきた司馬の日本人論の集大成であり、半世紀にわたる思索の結実が『この国のかたち』である。今回、NHKは司馬が『この国のかたち』を書く際に編集者たちと交わした膨大な手紙や当時を知る関係者を取材。そこから浮き彫りになった巨人最後のメッセージを2回にわたり読み解いていく。番組ナビゲーターは、俳優の香川照之さん。
第1回目は、“辺境の島国”という立地が日本文化をどうかたち作ったのかに焦点を当てる。辺境ゆえに海の向こうから来る普遍的な文化に憧れ続けた日本。司馬は、鎖国下の長崎・出島の好奇心や、大陸への玄関口・壱岐の異国崇拝の風習、東大寺に伝わる神仏習合の秘儀など、時空を自在に行き来して島国日本の基層に迫った。番組では、”日本のかたち”を象徴する様々な歴史的景観を映像化しながら、「日本人とは何か」を追い求める司馬の思索の旅をたどっていく。

放送を終えて

クリスマスを祝った翌週には、平気で神社へ初詣に行く日本人。結婚式は神父の前で誓いを立て、葬式には僧侶にお経を上げてもらい、ハロウィンもバレンタインも祝う、そんな人も多くいると思います。外国人から見れば、無節操にしか見えない、こうした日本的スタイル。実は、それは、この島国で生きる人々が古くから育んできた柔軟性や寛容性のあらわれなのだと、今回、司馬遼太郎さんの思索を辿りながら実感することができました。司馬さんが、日本人の特質と捉えた、多様な価値観を受け入れる「無思想の思想」と、外への「好奇心」。もし司馬さんが生きていたら、現代の日本人については、どのように語ったでしょうか。
番組では、およそ60日間にわたり日本各地で撮影を行い、実に多くの方々のお世話になりました。取材開始時に新調した120枚収納の名刺フォルダは、撮影が終わる頃には満杯になっていました。多くの時間や手間を割いて頂きながら、番組での登場がほんの30秒、あるいはまったく登場しなかったという方も中にはいらっしゃいます。この場を借りて心からの御礼とお詫びを申し上げます。 司馬さんを知らない方でも楽しめるような、間口の広い番組を目指して制作しました。是非お楽しみ頂ければ幸いです。
(ディレクター 橋本陽)