NHKスペシャル

私たちのこれから #雇用激変 
~あなたの暮らしを守るには~

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日本の未来の姿をシミュレーションし、対策を探る「私たちのこれから」。今回のテーマは「激変する雇用」。労働者派遣法の改正論議などが進む中、今、専門家たちが警告しているのが将来の日本に訪れるかもしれない「中間層が消えた活力なき格差社会」。それを招くのが現在進む雇用の「二極化」だ。低収入の非正規労働者が増える一方で、正社員は体を壊すほどの激務を強いられるという「働く人の二極化」。このままでは、老後破産が相次ぎ、それを支えるはずの社会保障が税収減から危機を迎えるという最悪のシナリオも浮上している。番組では雇用の現状を伝えるとともに、暮らしを守るために今からどんな手が打てるのか。新たな中間層を作るための「限定正社員」といった多様な働き方や、非正規の人々を支えるための「処方せん」を専門家や市民の討論を通して探る。また、放送中にスマホ・パソコン・データ放送から視聴者の皆さんに参加を呼びかける「視聴者ライブ投票」を実施、ツイッターやメールで寄せられる意見や質問も紹介、視聴者と一緒に考えていく。

放送を終えて

 市民参加型の討論番組「私たちのこれから」。シリーズ第2回目は「雇用激変」をテーマに、厳しい時代を生き抜くための「雇用」の現状、打開策、未来への展望を探りました。
 これまでも様々な形で取り上げてきた雇用問題ですが、今回取材する中で、見えてきたのは「雇用の二極化」という新たな課題でした。この問題が解決されないと、これまで日本を支えてきた「中間層」が消滅するかも知れないという指摘も明らかになってきました。それを打開するため、番組では、雇用対策と社会保障の2つの面から、解決の糸口や、手がかりを探りました。
 雇用を考えるには、労働者、企業、それを支える国という3者を見る必要があります。しかし、それぞれが抱える事情や思惑が、時に合致し、時にずれることが明らかになり、さらに、そこには非正規と正社員、大企業と中小企業、東京と地方、日本と世界といった環境や規模、処遇の違いが混在し、問題は根深く、複雑化していることを痛感しました。
 問題解決の糸口を探る、という番組ではありましたが、企業の経営方針や国の政策とは関係なく、働く人の日常や生活は、いま目の前に存在します。その生活を守ることが最優先であり、それが担保された上で、はじめて将来の展望を描くことができるようになる。特に「働く=雇用される」ことが前提になってきている今の社会において、働く人の待遇や処遇をどう考え、どう保障していくかは、企業や国が責任を持って、喫緊に手を打たなくてはならない問題だと考えます。
 今回も番組の生投票には、2万6千人もの越える方が参加。56万回を越える「気になるボタン」投票を頂くことができました。また、ツイッター・番組HPからは、放送中4千件を越える質問・意見を頂きました。
 こうした皆さんの高い関心は、「働くこと」と「生活する」ことが密接に関わる中で、声を聞いて欲しい、訴えたいといった「熱量」そのものだと感じました。
 労働者、企業、国の合意形成をどう図っていくか。ひとりの取材者として、番組を越えて、引き続き見つめていかなければならないと考えています。

  (大型企画開発センター ディレクター 神原一光)