NHKスペシャル

戦後70年 ニッポンの肖像 -政治の模索- 第2回 "豊かさの分配" その先に

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高度成長期、自民党は、“成長”の果実を、広く地方などに“分配”することを通じて、豊かさを求める民意に応え、政権の座にあり続けた。この流れを推し進めたのが、「列島改造論」「福祉元年」を掲げた田中角栄だった。戦後70年にあたってNHKが行ったアンケート調査でも「戦後を最も象徴する人物」の第1位となった田中。しかし、“成長”を“分配”し、更に自民党の集票につなげるという、いわゆる「角栄モデル」は、とりわけ経済の低迷が続いた1990年代以降、行き詰まり、“分配”が既得権益化、それを維持するために国の借金は膨張し続けた。
番組では、高度成長と共に定着していった自民党による“分配”の政治システムを見つめ直し、そこから脱却しようとする政治の模索を描くことで、今後の日本政治の課題を探る。

放送を終えて

「国民各層の利益を吸い上げ、国民全体の利益に統合して立法化することこそが、政治家本来の仕事である」(田中角栄)
今回の番組では、まさにこの田中角栄の言葉にあるように、それぞれの時代の政治家が、「人々の声にどう耳を傾け、何を築こうとしたのか」、様々な証言・資料・データをひとつひとつたどりながら、明らかにしていくことをめざしました。
長い戦後政治の歩みの中から何をエッセンスとしてまとめていくのか、限られた放送時間の中で、非常に難しい作業でしたが、今後の政治に何が求められるかを考えていく上で、ヒントや材料になるものを提供することが、何とかできたのではないかと思っております。
印象的だったのは、番組後半にゲストの御厨貴東京大学名誉教授(政治学)が語っていた、「もはやパイは増えていかない低成長時代において、政治には、切られる側に対し、ものすごい丁寧な説得と、緻密な論理が求められる」との言葉ですが、そうしたことが実際になされていくのかどうか、今後も注視して取材を続けていきたいと思います。
(ディレクター 班目幸司)

戦後70年を機に行った世論調査で「戦後を最も象徴する人物」になった田中角栄。
田中が総理大臣を辞めて40年以上が経つのに、“ニッポンの戦後”を体現する人物として田中の名前が挙がるのはなぜなのか。“今太閤”“コンピューター付きブルドーザー”“庶民宰相”“目白の闇将軍”など、実に多くの呼ばれ方をしている田中が築いたものとは、一体何なのか。それが今の私たちの暮らしに何を残しているのか。こうした問題意識が、今回の番組の出発点でした。
税収が右肩上がりの高度経済成長の時代であればうまく機能していたものも、低成長の時代に入ると、たとえ課題があることに気づいても、次なる政治モデルをなかなか見いだすことができない。日本経済の“失われる20年”にも繋がる課題かもしれませんが、日本政治も、かつてとは違う“簡単ではない時代”の中にいるということなんだと思います。低成長時代に持続可能な政治モデルを生み出すことは並大抵のことではありません。そのためには何が必要なのか、今後も取材していきたいと思います。
(ディレクター 長島悠)