NHKスペシャル

錦織圭 頂点への戦い

世界ランキング17位から5位へ。この1年で急成長を遂げたテニスの錦織圭。次の目標は初の四大大会優勝だ。錦織がいま痛感しているのが、トップ3の厚い壁。その象徴が絶対的王者、ノバク・ジョコビッチだ。
番組では、錦織の飛躍のきっかけとなった去年の全米オープン以来の錦織とジョコビッチの対戦を、詳細に分析する。1000分の1秒まで記録するハイスピードカメラで、中継映像では見られないボールの回転や微妙なフォームの動きなどを解析。選手とボールの位置をミリ単位で記録した「トラッキングデータ」を独自に入手し、両者の心理戦を再現する。そこから、頂点を目指す錦織の可能性と課題を心技体のあらゆる面から浮き彫りにしていく。
さらに、錦織とジョコビッチ、そして、それぞれのコーチであるマイケル・チャン(元世界2位)とボリス・ベッカー(元世界1位)へのインタビューを交え、トップ選手だけが知る「王者の条件」とは何か明らかにしていく。

放送を終えて

「あの時、どう思ったか」という質問に対して、錦織選手は「うそだ!と思った」と答えた。
世界ランキング1位・ジョコビッチ選手との今シーズン初戦となったイタリア国際。
あの時とは、そのファイナルセットの場面。
王者を追い込んでいた錦織選手だったが、ベースライン後方からドロップショットを完璧に決められた。
結局、錦織選手は敗れた。
「あのプレーこそ、NO.1のプレーだし、全ての面においてジョコビッチとは差がある」と、
錦織選手は力の差をあっさりと認めた。
悔しさが伝わってこないほどの潔さに、私は一瞬、驚いた。
しかし、その後、錦織選手の目の色が変わった瞬間があった。
「世界の頂点を目指している上で、『日本選手初の・・・』と言われることが好きではない」と、
はっきり言い切った時だ。
今は、ジョコビッチ選手との力の差はあるが、彼を倒すために何が必要かはわかっている。
必ず世界一になる。という強い信念が、その言葉と表情から伝わってきた。
負けず嫌いで、世界一になるという目標を決して諦めない。
錦織選手の強さの源は、そこにあるのではないかと感じた。

(ディレクター 浅木 真悟)