NHKスペシャル

生命大躍進 第2集 こうして"母の愛"が生まれた

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40億年前の地球最初の生命から私たち人間まで、一度も途切れることなく受け継がれている“命の記録”DNA。その中には、私たちの祖先にあたる古代生物たちに起きた、知られざる進化の“痕跡”が残されている。信じがたい幸運や、想像を絶する大絶滅といった波乱万丈のドラマの末に、進化の大躍進を成し遂げてきた“私たちの物語”とは?
「生命大躍進」では、最新のDNA研究で浮かび上がってきた、壮大な進化のドラマを、3回シリーズで描く。
第2集は、我が子を思う「母の愛」の誕生に迫る。今からおよそ2億年前、卵を産んだらそれで終わりだった祖先たちが、突如として献身的な子育てを始めた。それが、人間ならではの深い母子愛にまでつながった裏側には、祖先のDNAに起きた大異変があった!
俳優の新垣結衣さんが、一人二役で姉妹を演じ、番組をナビゲート。

放送を終えて

「ヒトのDNAの一部はウイルスに由来している」――そんな信じがたい話を研究者から聞かされたのが1年前のこと。しかも、そのウイルス由来のDNAが、ほ乳類の進化にも大いに関係しているというのだから、ますます信じられません。しかし、取材を進めていくと、過去のウイルス感染によって生物が進化していった証拠が、次々と見つかっていることがわかり、生物の教科書で学んだ進化論とは全く違う、SFのような新たな進化のイメージにとてもワクワクしたことを思い出します。番組では、こうした新しい進化論の中から、お腹で赤ちゃんを育てるための臓器「胎盤」の誕生にウイルスが関わっているという最新トピックと、それが人間ならではの「愛情あふれる子育て」へと繋がった物語をご紹介しました。想像に難くないことですが、ウイルス遺伝子が動物のDNAに入り込む時には、深刻な病気を引き起こすことがわかっています。多くの研究者に協力していただき、胎盤誕生の際に起きたであろう、ウイルス大流行の様子をリアルなCGで再現することに挑戦しました。私たちの祖先が絶滅寸前の危機を乗り越え、さらには侵入したウイルスの能力まで取り込んで進化してきた、その「たくましさ」を表現できるように、なんどもCGを練り直しています。私自身は、そうした祖先たちの苦闘の積み重ねの上に、自分の命があると想像すると、なんだか前向きに生きる力が湧いてきます。この3回のシリーズで紹介する、いくつもの奇跡的な進化の物語から、何かポジティブなメッセージを受け取っていただければと願っています。
(科学・環境番組部 ディレクター 佐藤匠)