NHKスペシャル

生命大躍進 第1集 そして"目"が生まれた

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40億年前の地球最初の生命から私たち人間まで、一度も途切れることなく繋がっている命の記録、DNA。その中には私たちの祖先に当たる古代生物たちの“痕跡”が残されている。信じがたい幸運や、想像を絶する大絶滅といった波乱万丈のドラマの末、進化の大躍進を成し遂げてきた“私たちの物語”とは?「生命大躍進」では、遙かな時を超えた壮大な進化のドラマを3回シリーズで描く。
第1集は「目の誕生」の物語。今からおよそ5億年前、それまで目を持たなかった祖先が、突如として精巧な目を持つようになった。いったいなぜ、急に目を持つように進化できたのか?私たちの「目の誕生」に秘められた驚きのドラマに迫る。

放送を終えて

「遺伝子は時に、異なる種の間を移動し、それをもらった生き物は突然、“パワーアップ”できる。動物の目はそうして生まれた器官の一つ」3年前、国内のあるDNA研究者からこの話を伺い、ビックリ仰天したことこそ、「生命大躍進」シリーズの誕生の瞬間でした。なぜなら普通、「進化は親から子へ世代交代する過程で起こる」と考えられているからです。DNA研究が示す「種を越えた遺伝子の移動」という進化メカニズムは、従来の進化論を根底から覆すような話でした。「ひょっとして自分もカニを食べたら、カニの遺伝子が移ってカラができるかも。葉っぱを食べたらその遺伝子で光合成ができるかも・・・(人ではさすがに起きません)」などと妄想しながら、その日、興奮して帰路についたことを鮮明に思い出します。この取材のおかげで「DNA研究を取材すれば、過去の化石研究を軸とした生命シリーズと違う、全く新しい生命進化の番組ができる!」と確信することができました。第1集では、その話をしてくれたDNA研究者を徹底的に取材し、研究者の脳内だけにあった「目誕生の物語」のビジュアル化に挑みました。実はDNA研究では肝心の「遺伝子をもらって大躍進をした祖先の姿形が分からない」という難題がありましたが、そこは化石研究者の助言を受け、当時の祖先の姿を科学的に推定することで乗り越えました。こうして、DNA研究者が思い描く、眼誕生の瞬間を描きました。また、難解なDNAの話をどうかみ砕いて伝えるか、という点にも苦労しました。議論の末、新垣結衣さんに「進化に詳しい姉」と「あまり興味のない“ふつうの”妹」の二役に扮して頂き、二人の軽やかな会話の中でDNAの本質を伝えていく、という演出にたどり着きました。この番組では、時にCGで再現した古代の生物たちが、新垣さんや研究者たちがいる現代の世界へと飛び出します。遊び心にあふれたこのシリーズを通じ、人がいまここにいるようになった理由である「太古からの命の物語」に、子供から大人まで、家族みんなで思いをはせて頂ければ、担当者として幸いです。

(チーフ・ディレクター 植田和貴)