NHKスペシャル

シリーズ東日本大震災 傷ついた人に寄り添って
~黒田裕子さん・被災者支援の20年~

去年9月、元看護師の黒田裕子さんが肝臓がんで亡くなった。73歳だった。黒田さんは、阪神・淡路大震災の仮設住宅で高齢者の見守りや災害看護といった活動を開始して以来、災害支援の道をつねに現場で切り拓いてきた人物である。その後、能登、中越、四川、ハイチ、そして東日本大震災に見舞われた東北と、20年にわたり、多様な被災地の課題に向きあいつづけてきた。去年8月に末期がんと診断されてから急激に衰弱していく中、黒田さんは、20年の活動を通して募った思いや、苛酷な体験の数々、未練が残る現在の現場や積み残した課題について、絞り出すように語りはじめた。
兵庫県西宮市の病院で体調が悪化し、たっての希望でふるさと・島根県の病院に空路で転院、やがて昏睡状態になるまでの3日間、カメラは黒田さんを記録しつづけた。黒田さんは最期の3日間何を語ったのか。どんなメッセージを私たちに遺そうとしたのか。黒田さんの20年を過去の映像や証言などで振り返りながら、その峻烈な生き様と、浮かび上がる被災者支援の課題を見つめていく。