NHKスペシャル

京都御所 ~秘められた千年の美~

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京都の中心にある広大で神聖な空間、京都御所。平安時代の華麗な文化が厳格に守り継がれ、建物から調度品一つ一つに至るまで、伝統工芸の粋が集められている。一方、御所は平安貴族の王朝絵巻はもとより、信長、秀吉の戦後時代から幕末維新の動乱まで、千年の長きにわたり日本の歴史の檜舞台でもあった。今回NHK京都放送局では、非公開の京都御所の内部を、高精細4Kカメラで通年取材する許可を得た。
代々の帝が即位の時に座った玉座「高御座(たかみくら)」は、麒麟や鳳凰が描かれた台座に螺鈿(らでん)の椅子、その上に金銀をちりばめた6mの覆いがかかる巨大な美術品だ。帝の“応接室”と呼ばれる一間は、当時大陸から運ばれた群青(ぐんじょう)や金など貴重な絵の具をふんだんに使った極彩色の障壁画に囲まれ、輝きを放っている。そして、源氏物語や枕草子の舞台ともなった御殿・清涼殿は、帝が暮らした時代の様式を大事に守り伝えている。
今回は御所の美しい姿を保ち、後世に伝える、匠たちの技も取材。奥山で採取した樹齢100年の檜の皮で、屋根の優美な曲線を作る技術や、御所・離宮にだけ伝わる壁塗りの技法などを記録した。京都に残された、最後の聖域、京都御所。その全容を明らかにする。

放送を終えて

「日頃見ることができないものを見て、立ち入ることのできない場所に行く」という素朴な好奇心から、今回の番組の取材はスタートしました。年間5千万人以上の観光客が世界中から訪れる大観光都市京都の中心にある不可侵な空間、京都御所。広大な敷地の中にはほとんど人の気配がなく、重々しい障壁画に囲まれた薄暗い御殿の中は他の場所にはない独特の空気が流れています。無人の中咲き誇る千年前の歴史を秘めた桜や一木一草まで極上の献上品で作られた庭。言葉では言い尽くせない御所独特の空気感を表現するために、今回導入したのが高精細4Kカメラです。まだまだノウハウが確立されていないため、一日の撮影で数テラバイトに及ぶ素材をどう管理するか、被写体に対しどのレンズを選びどういうライティングをするかなど日々試行錯誤の連続でしたが、なんとか無事放送にこぎつけることができました。今回の番組が21世紀初頭の京都御所の姿を後の世に伝える記録となってくれれば、制作者としてこれに勝る喜びはありません。最後になりましたが、1年間の長期取材におつきあいいただいた宮内庁京都事務所の皆様に厚く御礼申し上げます。

(京都放送局ディレクター 黒田健一)