NHKスペシャル

いつでも夢を ~作曲家・吉田正の"戦争"~

「いつでも夢を」など、敗戦後の混乱から高度成長へと向かう日本人を励ます数々の名曲を残し、国民栄誉賞も受賞した作曲家・吉田正(1921-98)。吉田が、戦地や抑留地でひそかに作曲した「歌」が、いま、次々と発見されている。21歳の時に徴集され、ソ連との戦闘で瀕死の重傷を負ったこともあった吉田は、その後、シベリアに抑留され過酷な収容所生活を強いられた。生前、吉田自身は、軍隊・抑留生活の中で作った作品を公にしてこなかったが、戦友や抑留経験者たちが“ヨシダ”という仲間が作ったという記憶とともに密かに歌い継いでいたのだ。4年前、一人の抑留経験者の情報提供をきっかけに、レコード会社が地道な聞き取り調査を開始。これまでに20曲余りが発見・復元され、戦後の日本歌謡の「原点」となるとして音楽関係者の注目を集めている。敗戦に打ちひしがれていた日本を照らし続けた「希望の旋律」の背後にあった「戦争の旋律」。戦後70年近く公になることのなかった歌の発掘を通して、国民的作曲家の戦争を見つめる。