NHKスペシャル

水爆実験 60年目の真実 ~ヒロシマが迫る"埋もれた被ばく"~

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1954年、太平洋ビキニ環礁でアメリカが行った水爆実験。その当時、周辺ではのべ1000隻近くの日本のマグロ漁船が操業し、多くの漁船員が放射性物質を含む「死の灰」を浴びた。しかし、それ以降の研究者やメディアなどの追及にもかかわらず、第5福竜丸以外の漁船員たちの大量被ばくは認められてこなかった。
あれから60年、「なかったとされてきた被ばく」が科学調査や新資料から、明らかにされようとしている。立ち上がったのは、広島の研究者たちだ。長年、がんなどの病気と放射線被ばくとの因果関係が認められない原爆被爆者らを支援する中で編み出された科学的手法を用い、ビキニの漁船員の歯や血液を解析。「被ばくの痕跡」を探し出そうとしている。
東西冷戦の大きなうねりの中で、埋もれてきたビキニの被ばく者たち。被爆の苦しみに向き合ってきたヒロシマが共に手を携え、明らかにしようとする「真実」を、克明に記録していく。

放送を終えて

60年間、仲間たちが次々と原因不明の病で倒れていくのを目の当たりにしながら、被ばくを証明する術がないため何もできなかった漁船員たち。取材を始めた頃は、「今さら被ばくを訴えたところでどうしようもない」と真相解明を諦めていた漁船員たちが、ヒロシマの科学者が立ち上がったことで、自らの体で被ばくを証明しようと積極的に科学調査に協力するようになったことが印象的でした。初めて第5福竜丸の漁船員以外の被ばくが科学的に証明されたことで、その存在をこれまで否定してきた国はどう動くのか、注視し続けたいと思います。
(広島局ディレクター 花井利彦)

約1年半かけて制作したこの番組。科学調査はどこまで進むのか、資料は残されているのか。不確定要素の多い取材の中、「自分らは見捨てられた存在」「父は苦しみ抜いて死んでいった」と語る当事者やご遺族の方々の証言が取材継続の強い動機を下さいました。誰からも顧みられることのない問題に向き合う調査報道の意義を噛みしめる番組となりました。
(広島局ディレクター 石濱陵)