NHKスペシャル

シリーズ日本新生 "超人手不足時代"が
やって来る

今年4月、国は32年ぶりに生産年齢人口(15歳~64歳)が8000万人を割り込んだと発表。団塊世代がリタイア期に入ったことで、総人口の減少を遙かに上回る年間100万人の割合で働き手は減り続け、2040年には6000万人を割り、不足する労働力は最大で800万人に達するという試算もある。すでに「介護」「建設」「保育」「看護」の分野などで、若年労働者の激しい争奪戦が繰り広げられるなか、期待されているのが「女性」の進出。しかし、子育て中の女性が働くには、保育やベビーシッターの充実が不可欠だが、過酷な労働環境のため慢性的な人手不足に陥り、サービスは十分でない。さらに介護や医療では「在宅シフト」が進められることで、実際には女性の家事労働の負担が増し、働きに出ることがさらに困難になるという指摘も出てきている。また、介護現場や経済界からは「外国人労働者」の受け入れ拡大を求める声が上がっているが、これについても安い労働力の流入による労働環境の劣化や治安悪化への不安から抵抗が大きい。国も6月の新しい成長戦略で「全員参加の社会」を掲げるなど、日本の大きな課題となった「超人手不足社会」。どうすれば社会の活力が維持できるのか?そのためには私たちの働き方をどう変えていけばいいのか?徹底的に議論する。

放送を終えて

スタジオ討論で湯浅誠さんが気づき発したひと言が忘れられない。「“日本文化”を言い訳に、外国人受け入れを拒んできたことと、男性中心の“企業文化”を言い訳に女性は無理だと言ってきたこと。この2つは似ている。」こうした気づきこそ、「人手不足をテーマに女性、外国人、高齢者をひっくるめて個別論に陥らずに議論すれば何か新しい切り口が見えるのではないか」という制作コンセプトを貫くことで得られたものだった。
討論番組の醍醐味は、視聴者が行きつ戻りつする討論のゆくえを見守ることで、テーマを反芻しながら理解を深め、最後は新たな価値観にたどり着くことが出来ることだと思う。
そのためには、討論中、視聴者が疑問に思うことをタイムリーにデータや情報で差し挟み、「なるほど」と納得してもらうことが欠かせない。その点、今回は11のインサートVを織り込みつつ、「東京が共働きがいちばん少ない」といった「へえ~」な情報も盛り込み最後まで飽きさせない工夫が出来た。事務局からは「討論の際、有識者と市民の垣根がなかった」との言葉をいただいたが、このことは、視聴者自身が討論に入っていける番組だったということでもある。日本新生がこれからも「市民が議論することが日本を変える力になる」というコンセプトで敷居は低く、でも高みにたどり着く番組でいて欲しいと思う。
番組に参加させていただき有り難うございました。

(ディレクター 山下文五)