NHKスペシャル

宝塚トップ伝説 ~熱狂の100年~

世界的にも珍しい未婚女性だけで構成される宝塚歌劇団が、この4月に100周年を迎えた。その根幹に位置づけられ、熱狂的ファンを獲得する原動力となってきたのが“男役トップスター”のシステムである。常に舞台の主役を演じ、誰よりもキラキラの衣装、ひときわ大きな羽根を背負う独特のスタイル、ピラミッド組織の頂点に君臨しながら、必ず人気絶頂の中で「卒業」する制度…。ファン以外には不思議な存在にも映る、花・月・雪・星・宙の5組5人のトップスターへの同時密着取材を通して、その知られざる世界へといざなう。

放送を終えて

放送から1週間後、1人のトップがタカラヅカを“卒業”しました。エンターテインメント界で、“卒業”をよく耳にするようになった昨今、タカラヅカでは、100年前から繰り返されてきました。
“一目見ようと駆けつけるファン。笑顔で手を振りながら楽屋に入るタカラジェンヌ”
“ほぼ1年中、専用劇場で公演が開かれ、会いに行くことができる”
“厳しい競争を勝ち抜き、人気を得た者のみがトップとなり舞台のセンターに立つことができる…”これらもタカラヅカが長年の歴史の中で築き上げたものでした。
誰もが知っているのに、ちょっと敷居が高いタカラヅカ。しかし、今日、私たちが当たり前のように触れるエンターテインメントの礎は、タカラヅカ100年の歴史にあるのではないかと感じています。
「夢のために命をかけられる場所」。5月に卒業したトップは、タカラヅカをこう表現しました。ファンに多くの夢を与えてきたタカラヅカ。そこにあったのは、夢を見続ける女性たちの姿であり、夢に向かい燃え尽きるまで努力する人間の姿、それが100年もの間、絶え間なく続いてきたという事実でした。
しばらく、タカラヅカ熱は、収まりそうにありません。
(ディレクター 佐藤祐介)

学生時代、母校にタカラヅカの大ファンの男性教師がいて、授業中もタカラヅカの話を私たち生徒に熱く語っていました。そのとき、高校生の私の記憶に刻み込まれたのは、ファンと非ファンの間にある温度差、ある種のギャップでした。今回、宝塚歌劇団100周年にあわせて、番組を制作するにあたり、改めて多くの方を取材したうえで、前提として、そのギャップをどう埋めていくことができるかということがありました。企画自体は、人々を熱狂させてきたタカラヅカの華の“根源”とでもいうべきものに少しでも迫ることができればというものでしたが、、放送の限られた時間の中、結果的に、ファンのみなさまはもちろん、非ファンのみなさまにも関心を持ってご覧いただけたかどうか。放送を終え、その点について制作者として今、問い直しています。
(制作統括 岩堀政則)