NHKスペシャル

中国激動 空前の農民大移住

世界第2位の経済大国へと成長を遂げた中国――。しかし今、成熟期を迎えたがゆえのさまざまな課題に直面している。中国では、今一体何が起きているのか――。これから中国はどこへ向かうのか――。習近平国家主席が率いる新体制下で進められる対策とその課題、そして人々の葛藤を、徹底した長期ルポを通じて克明に描写。2週連続で、次なる中国の姿を探る。
1回目の舞台は、中国内陸部の都市・重慶。郊外に林立する高層マンションでは、くわやかごを背負った住民が行き交う。彼らは住み慣れた農地を離れ、マンションに移住してきた元農民だ。中国では今、農村の都市化が進められており、重慶はその政策が最も進む最前線の街である。
これまで中国では、戸籍制度によって都市民と農民を分け、待遇に違いを付けてきた。その結果、人口の多数を占める農民は経済発展から取り残され、広がる格差に不満を募らせてきた。“格差是正”を掲げる共産党新執行部にとって、農民を都市民に変え、豊かさをひとしく享受できる社会を実現することは、避けて通れない課題となっている。
ところが、中国経済の減速が、重慶の“農村都市化”に影を落とし始めている。元農民の雇用を確保するための企業誘致が、思惑通りに進まなくなっているのだ。憧れの都市民になったはずが、厳しい現実を突きつけられている元農民たち。揺れる農村の都市化の現場をルポする。