NHKスペシャル

僕はなぜ止められなかったのか? ~いじめ自殺・元同級生の告白~

14歳のとき、“相棒”と呼び合った友だちから「今までありがとう。さようなら。」というメールを受け取った少年がいる。その友だち・篠原真矢(まさや)くんは、
自分や友だちがいじめられていることを苦にし、少年にメールを送った直後、自ら命を絶った。
少年は、「なぜ何もできなかったのか」と悔やむ気持ちを抱えながら、3年たった今も、月命日には必ず真矢くんの両親のもとを訪ね続けている。
いじめは、被害者だけでなく“傍観者”にも時として大きな心の傷を残す。番組では、少年が「何もできなかった訳」をドラマで掘り下げながら、その悔いをなんとか軽くしてやろうと言葉を探す父親との交流の夏をドキュメントで追う。

放送を終えて

取材から放送まで、よくも悪くも、とにかく悩みました。亡くなった少年のことを、どう伝えるのか。元同級生の後悔をどう伝えれば、いじめを考えるきっかけとして捉えてもらえるのか・・・。振り返れば、プレッシャーに押しつぶされそうになったときもありました。しかし、そんなときに私の背中を押してくれたのは、ほかならぬ、取材を受けてくれた元同級生とご遺族でした。
取材を受けることは、膨大な時間と労力、そして“覚悟”が求められます。それでも、「いじめが、最悪の結果につながらないように」との一心で、元同級生とご遺族は、胸の内に秘めてきた思いを語ってくれました。
また、撮影をしていない所でも、ほかにもたくさんの元同級生たちが取材に協力してくれました。ドラマは、事件後に出された調査報告書がベースになっていますが、教室の空気感などは、その皆さんの証言を参考にさせていただきました。放送後には、元同級生の何人かから「確かに、あんな雰囲気だった。あのまま“いじり”を放置する怖さを知ってほしい」との声(後悔)も寄せられました。
亡くなった少年を中心に、さまざまな人の思いがつまったこの番組。見ていただいた方から何らかの行動が生まれ、いじめがひどくなると言われる2学期に向けて、一人でも多くの子どもに役立つきっかけになればと願っています。

青少年・教育番組部 小堀友久