NHKスペシャル

世界初撮影! 深海の超巨大イカ

伝説の怪物「ダイオウイカ」。古来より船を沈めると恐れられてきた最大18mに及ぶ世界最大のイカだ。しかし、深海で生きた姿を見た者は誰もいない。地球の海・最後のミステリーといわれる幻の超巨大イカの撮影に、NHKと国立科学博物館などの国際チームが挑戦。世界遺産の小笠原諸島を舞台に、科学者やエンジニアなど11カ国から50人のスタッフが結集した。
透明ドーム型で340度の視界をもつ最新鋭の潜水艇2隻に、NHKが開発した深海用超高感度カメラを搭載、水深一千mの深海に潜航する。目指すのは発光生物や新種の生物に満ちた深海の秘境・トワイライトゾーン。ダイオウイカを誘き出すため、科学者たちは大胆な作戦の数々を展開する。オトリ作戦、発光生物の光でおびき出す作戦、異性を引きつける化学物質・フェロモン作戦。なかでも、ダイオウイカ最大のライバル・マッコウクジラにハイテク小型カメラを装着し撮影する試みは圧巻。
10年の歳月をかけ地道に調査・準備を進めた末、ついに奇跡を呼び起こす。人類が初めて遭遇したその姿は、黄金にまばゆいばかりに輝いていた!
潜航回数100回、潜航時間400時間に及ぶ空前の海洋科学アドベンチャー番組。

音楽・久石譲 演奏・東京ニューシティ管弦楽団
国際共同制作 NHK/NHKエンタープライズ/ディスカバリー・チャンネル(米)

放送を終えて

「世紀の大スクープ!」「人類初遭遇!」なんて、うたいあげてはみたものの、実は内心ドキドキでした。西欧では怪物伝説のモデルとして大人気のダイオウイカですが、日本ではイカはごくふつうに食卓にのぼる食べ物です。深海に住む幻のイカに視聴者の皆さまが関心を持ってくれるのかどうか・・・。でも、そんな心配は杞憂(きゆう)に終わりました。というより、的はずれでした。ダイオウイカはあくまで未知の象徴であって、それを必死に追いかけていく研究者たちの姿に魅せられた、という声を多く耳にしました。そして、子どもも大人もテレビを見ながら、みんなで一緒に深海を探検していくようなドキドキ感が楽しかったというのです。一家団らんで、仲間うちで、ネット上で、イカは一体どんな「酒の肴(さかな)」となったのか。番組が温かなひとときを演出してくれたなら幸いです。
また、身近な日本の話題を、日本の放送局が世界に先駆けて撮影できて本当に良かったです。研究者や地元の方と幻のイカの生息情報をこつこつと集め、撮影機材や調査機器を試行錯誤しながら開発してきた10年間が、ようやく実を結んだのですから。
「見たことがないものを見ようと挑戦する」。テレビの原点のような番組づくりに関われたことに感謝します。

ディレクター 小山靖弘