NHKスペシャル

シリーズ東日本大震災 がれき "2000万トン"の衝撃

東日本大震災で発生したがれきは、東北3県の沿岸部だけでも1880万トン。これは阪神・淡路大震災を超え、過去最大級とも言える膨大な量である。そのうち、今年5月までに処理が終わったのは2割に満たない。今も、被災地には高さ20メートルものがれきの山が残ったままで、震災から3年以内に全ての処理を終えるとしている国の目標に黄信号がともっている。
国は焼却や埋め立てを全国の自治体に依頼する「広域処理」を進めようとしているが、焼却施設や処分場の不足、そして放射能の影響を懸念する地元住民の反対もあって、難航。さらに、ここに来て、行き場のない不燃性のがれきの処理が新たな問題として浮上。
一方、津波で海上に流出し、太平洋を巡ったがれきが、北米に続々と漂着。その処理をめぐって、国際問題に発展する懸念も出始めている。
空前の津波で発生した膨大ながれき。震災から1年以上経ってなお、数々の問題を引き起こし続けるがれきの行方を追う。

放送を終えて

私が今回の番組に取り組むにあたって最も悩んだのは、北九州市のリポートの位置づけでした。がれき受け入れに反対をした地域の住民の声は、ともすれば被災地の方々を傷つけたり、失礼にあたったりするのではないかという不安がありました。
しかし実際に反対を表明した地域の住民の取材を進めてみると、反対の根底にあるのは“がれきや放射能”よりも“行政のやり方に対する不信感”であることが分かってきました。取材チームで何度も話しあい、この実態を伝えることこそが“がれき受け入れの難しさ”を伝えることだと確認しながら番組作りを進めました。そして痛感せざるを得なかったのは、「原発事故以降続く市民の行政に対する不信感は、ここまで拡大し、根深くなっているのか」ということでした。
このままでは、いつ第2、第3の“がれき問題”が起きても不思議ではない・・・これが放送を終えた今の実感です。

ディレクター 末澤誠士(北九州局)


がれきに対する被災地の思い、それは簡単に言葉にできるものではなく、我々が勝手に定義づけてはいけないということをかみしめながらの取材でした。仮設住宅に最後まで当たらず、やっと入居できたのが、がれき置き場の隣だった親子…。がれきを見るたびに肉親をがれきの中から見つけた日のことを思い出す遺族…。がれきの質問ばかりしていたら「それ以前に、明日どうやって生きていくのかが問題よ!」と怒られたこともありました。
この1年、進んだり戻ったりする被災地の現実(足踏み状態?被災地だけおいていかれる感覚)と、それ以外の地域の「がれき=汚染されたもの」という認識のギャップにも戸惑い続けました。
番組が終わった今でも、自分の中ではまだ複雑な思いが残り、うまくまとめることができません。ただ、今後も、がれきが無くなる日まで、その過程をしっかり見ていきたいと思います。

ディレクター 西脇秀美(仙台局)