NHKスペシャル

MEGAQUAKEⅡ 巨大地震 第3回 大変動期 最悪のシナリオに備えろ

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東日本大震災を境に、各地でさまざまな異変が続いている。東北が中心だった余震が南へ移動し、首都圏の直下で頻発。また、活火山の中には発光現象などが観測され、活動が活発化した可能性を指摘されるところもある。「日本は今、長いサイクルで繰り返されてきた“大変動期”に入ったのではないか」という見方も生まれている。
そうした中、最新の科学は、今回の地震が残した膨大なデータを手がかりに、次の巨大地震や大災害を読む研究を加速させている。首都直下地震が危惧される東京。多くのプレートが重なりあう複雑な地下構造が明らかになり、複数のリスクがあることが、浮かび上がってきた。どこに、どんな規模の地震の可能性があるのか、詳細な調査が始まっている。さらに、300年間沈黙を続けている富士山。最新の研究から、直下にある“マグマだまり”が、巨大地震による地殻変動や余震によって“変形”を起こしている可能性が浮かび上がってきている。
番組では、最新のシミュレーションとCGにより「最悪のシナリオ」を描き出す。日本に住む限り逃れられない巨大地震と火山噴火にどう向き合っていけばいいのか。最新の予知研究も紹介しながら考えていく。

放送を終えて

ふりがなや息継ぎのポイントなど、赤い書き込みでびっしりの、俳優・仲村トオルさんの台本。じっくり読み込んできてくれたことを伺わせるその台本を見て、最後の最後、ナレーションという “いのち”を番組に吹き込む大事な役を、この人に託す幸せを思いました。結果、科学が懸命に迫ろうとする巨大災害のリスク、その実像を、シャープに説得力をもって提示したいという番組の方向性を、見事に表現して下さったと感じています。
6時間にも及んだ収録を終え、ナレーターブースに向かうと、仲村さんがヘッドホンを外しながらこう言いました。「ラストのコメント、自然と、自分の子供たちに届けたいと思いながら読んでいました。起こりうる最悪の事態を知り、想定しながら、とにかく生きろ、生き抜けってことですもんね。日本人にはその強さがあるってことですよね・・・」
ひとりでも多くの方が、そんな風に番組を見て頂き、次の災害への心構えを共有するきっかけとなれば、スタッフ一同、幸いです。

「大地の変動を誰も止めることは出来ません。
それでも、わたしたちは、災害の脅威に立ちすくむことなく、
次の時代へと命をつないでいくのです」

ディレクター 内山拓



私は首都直下地震について主に取材しました。最大の驚きは、“太平洋プレートが起こした東北の巨大地震は、フィリピン海プレートに影響を与えた可能性が高い”という事実を知った時です。
それまでの取材では、日本を囲む太平洋プレートとフィリピン海プレートは別々に動いているため、日本全体の地下が活発になる“大変動期”というのはありえないという考え方の専門家もいらっしゃいました。
しかし、実際に関東の地下では、フィリピン海プレートの境界面が活発化し、地震の数を増やしていることが、データとして明らかになっていました。地球の一つの大きなイベントが連鎖的に影響を及ぼすメカニズム。それを知った時、“大変動期”がにわかに私の中で現実味を帯びてきました。
東北の巨大地震によって、多くの貴い命が失われました。
一方で私たちは、地球のメカニズムを知るための手がかりもたくさん手に入れています。その手がかりが“次の巨大地震”が起きてしまった時、一人でも多くの命を救うことにつながってほしいと願っています。

ディレクター 木下義浩