NHKスペシャル

桂離宮 知られざる月の館

江戸時代初期、八条宮智仁・智忠親王父子が別荘として造営した桂離宮。
素材を選び抜き、それぞれの持ち味を最高に生かした建築。技巧の限りを尽くしながら、さりげない表情をみせる庭園。誇らしげな美よりも慎ましやかなものに価値を置く美意識は、「日本美の極致」と讃えられてきた。
初代・智仁親王は、幼少時に豊臣秀吉の養子となるが解消され、のちに兄・後陽成天皇からの譲位の申し出も徳川家康の反対で潰えた。「ならば王朝文化の再興をめざそう」と、桂離宮の普請に後半生を捧げた。池に張り出す「月見台」など、独特の造形を生み出した。
宮家を継いだ智忠親王が、桂離宮を現在の形に整えた。庭園に個性的な4つの茶屋をしつらえた。御殿では、壁紙から襖の引き手、長押の木材に至るまで、濃やかに意匠をこらした。凝りに凝った別荘を建設したのは、宮廷文化の中心人物・後水尾上皇をここに招こうとしたから。後水尾上皇は、徳川幕府に対抗する公家たちの象徴的存在でもあった。
豊臣の世から徳川時代へと移る動乱期に桂離宮はどのように造営されたのかを説き起こしながら、ふたりの親王が強いこだわりをもってつくりあげた王朝の美に仔細に迫る。