NHKスペシャル

地域の医療はよみがえるか ~夕張からの報告~

国の医療制度改革が進むなか、相次ぐ病院の閉鎖や深刻な医師不足など、地域医療が危機に瀕している。そんななか、財政破綻した北海道夕張市で、これまでの医療の常識を超えた「地域医療再生」の取り組みが始まった。
44億円もの負債を抱えた市立病院の再建。誰もが尻込みする「火中の栗」を拾ったのが、同じ北海道の旧・瀬棚町で診療所長を務め、日本一高かった老人医療費を大幅に引き下げたことで知られる村上智彦医師(46)。「公設民営」という形で経営を引き継ぎ、ベッド数19の診療所として今年4月、再スタートを切った。
村上さんは小回りのきく診療所のメリットを活かし、患者宅への「訪問診療」と「予防医療」に重点をおく。病院が患者を抱え込むのではなく、地域や家族と手を携え患者をケアする体制へ。これによって病院に対する住民の意識を変えるとともに、「大量の投薬」と「社会的入院」によって膨れ上がった医療費を抑えられると踏む。
しかし村上さんの構想の前には、従来の病院経営に慣れ切った自治体や住民の「常識」、そして患者を地域に帰すにはあまりにお寒い介護の体制など、さまざまな壁が立ちはだかる。番組では、これまでの医療の常識を打ち破ろうとする夕張市の取り組みを通して、地域医療再生の処方箋とは何なのか、探っていく。