NHKスペシャル

生中継 京都 五山送り火

京都の「五山送り火」は、150万都市まるごとを舞台とする壮大な炎の行事である。盆の終わりの8月16日、夜8時からの40分間だけ、5つの山に5つの火文字が浮かび上がる。「大」「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」という文字や絵が、京都を囲む5つの山に順に灯される。「大」は人形(ひとがた)で心身の健康を祈る火。次の「妙法」はお経の題目。ついで精霊舟の「船形」と「左大文字」、最後に「鳥居形」と5つの火を見送ると、お盆に帰っていた先祖の精霊をあの世へ送ることになるという。
山の斜面に浮かび上がるダイナミックで勇壮な火文字。その燃え上がる炎を京都の町の人々は失った家族のことを思いながら静かに見送る。五山送り火は、京都の街全体を生きている人と亡くなった精霊が交差するお盆の空間へと変えるのだ。
京都の街全体を舞台とした五山の送り火だが、最近、ビルが増えて五山全てを見ることができる場所が殆どなくなった。そこで今回のNHKスペシャルでは、五山全ての火を京都市内各所から「多元」・「生中継」を試みる。準備風景から鎮火までを完全生中継するために、ハイビジョンカメラ20台以上を用意。山上、送り火俯瞰ポイント、古都の辻辻に配置する。時時刻刻、さまざまに表情を変える送り火を、現場に居る人々共に同時体験する。そして送り火を支える人、見つめる人それぞれが祈る夏の一夜を鮮やかに浮かび上がらせる。