NHKスペシャル

秘密尋問所トレイシー ~日本人捕虜が語った機密情報~

太平洋戦争の最中アメリカは、前線で捕らえた日本兵から詳細な情報を集めていた。その中でも機密性の高い情報を、集中的に聴取していた収容所があった。サンフランシスコ郊外の秘密尋問所「トレイシー」である。1943年に捕虜収容所として整備されたこの建物で、2000人を超える日本兵が尋問を受け、潜水艦や戦艦の詳細な図面や、本土爆撃のための軍港・工業地帯の地図、暗号表など、日本側の情報が次々とアメリカ側にもたらされていた。盗聴装置を使って、捕虜同士の会話も収録し分析していた。1945年になると、天皇や政治経済に聴取内容が及び、それらは戦後のGHQの占領政策に活かされていく。近年のイラク戦争のアブグレイブ収容所など、「人的情報」を有効に使うアメリカの戦術は、既にこの頃から始まっていたのである。秘密尋問所「トレイシー」で、アメリカ側尋問官は何を聴き、日本兵は何を喋ったのか。国立公文書館に眠る厖大な「トレイシー尋問調書」と、生き残りの日米関係者へのインタビューによって、太平洋戦争の「人的情報戦」の知られざる闘いを掘り起こす。