NHKスペシャル

にっぽん 家族の肖像 第1集 母と子 悲しみの淵から

鹿児島のハンセン病療養所「星塚敬愛園」で暮らす元患者・84歳の日高トシ子さん。強制隔離によって両親と引き裂かれた。そして、妊娠7ヶ月の時、施設で強制的に“娘”を堕胎させられた。一昨年、この“娘”が胎児標本として施設に残されていることが明らかになった。
2年前に、母が“娘”を奪われていた衝撃の事実を初めて知った息子の一夫さん(60歳)。いまだに残るハンセン病への差別・偏見。その中で、大手企業の取締役まで勤めた一男さんは、会社を早期退職し、母の願い=“娘”の供養のために、母に寄り添い、支え始めた。そして、今年ついに母と息子が、“娘”との対面を果たした・・・・。このすべてをカメラは記録した。
女性の元患者・80歳の上野正子さん。上野さんは、夫が断種手術を強制され、子を持つことができなかった。妻に一言の相談もなく、子どもを持つという夢を奪った夫。上野さんは、夫を長く許せなかった。60年続いた夫婦生活。夫が去年亡くなり、上野さんは、慟哭の中で語った。「妻を強制堕胎で苦しめたくなかったから、夫は自ら犠牲になった。私は愛されていた」。
奪われたからこそ、失ったからこそ、わかる、家族が普通に暮らせることの尊さ。
高齢になった女性たちが、今再び家族を持つことは「夢のかけはし」でもある。
女性たちの残された日々を、その夢への思いとともに見つめる。