NHKスペシャル

ラストメッセージ 第2集 「核なき世界を 湯川秀樹」

日本人で最初にノーベル賞を受賞した物理学者、湯川秀樹。敗戦まもない日本人に勇気と希望を与えた戦後復興のシンボルだった。ラジオ番組で自らの性格を「非常に内向的」と話し研究に没頭していた湯川は、第五福竜丸が被爆したビキニ事件に衝撃を受け、科学者の先頭に立って核兵器の廃絶運動に乗り出した。それは、物理学が生み出した核兵器の恐ろしさをアインシュタインと語り合っていた湯川にとって“科学者の責任”という博士の遺志を継ぐことでもあった。1960年代、核抑止論を根拠に米ソ超大国が核開発競争を繰り広げる。湯川は「核抑止論では兵器開発は止められず、核保有国は拡散する」と警告し、絶対悪の核はあくまで廃絶しなければならないと主張した。しかし、状況は悪化するばかりで苦闘を強いられる。晩年、ガンに侵されながらも「核廃絶の道は必ずある、人類の叡智を結集すべきだ」と繰り返し、言い続けた。生誕百年を迎えるにあたり、母校・京都大学が中心となって膨大な記録の整理を進めている。番組では、未公開資料や映像記録、そして遺志を継ぐ物理学者の証言を中心に湯川の苦闘ぶりを浮き彫りにする。イランの核開発、北朝鮮の核実験宣言に揺れる今、湯川の言葉の重みを問い直したい。

案内役:国井雅比古アナウンサー