NHKスペシャル

21世紀の潮流 ラテンアメリカの挑戦 第2回 「格差からの脱出 ~ブラジル・チリ~」

世界最悪の「格差社会」、ラテンアメリカで今、新たな挑戦が始まっている。「平等な社会」を目指そうとする左派政権が、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ベネズエラ、ボリビアで相次いで誕生したのである。これらの国々は、経済再建のため、早くからアメリカ主導の、「規制緩和」「民営化」「外資の導入」といった新自由主義経済を受け入れてきた。しかし、それは逆に「格差」の拡大を生み出し、人々は不満を募らせていった。

ブラジルを始め、左派政権の国々が去年団結して反対したのが、アメリカが進めてきたFTAA(米州自由貿易圏)の構想だった。FTAA構想は、関税を撤廃し、多国籍企業により大きな自由を与えることで経済を活性化させようとするものであった。これに対し、左派政権の国々は、新たな市場を中国、インドなどに求めようとする、いわば「脱アメリカ」に動き始めたのだ。

急速な反米の動きの底流にはまた、ラテンアメリカの多くの国に共通の暗い記憶がある。冷戦下アメリカは、この地域に誕生した社会主義政権にたびたび介入。多くの国に軍事政権が生まれ、思想の弾圧や虐殺などが繰り返されてきた。現代の潮流の根底には過去の記憶が横たわっている。

一方、アメリカは去年7月、海兵隊を、南米の心臓部といわれるパラグアイに駐留させた。9.11以後、アメリカは、ブラジル、アルゼンチンとの国境地帯を「イスラムテロリストの温床」と規定し、監視を強めると表明した。ブラジル、アルゼンチン政府は不快感を露わにしている。

番組では、格差からの脱出を計ろうと動き始めた、ラテンアメリカとアメリカの間に生まれている新たな緊張の内実を描いていく。