NHKスペシャル

“いのち”の対話 ~妊娠中絶・医師2人の模索~

厚生労働省研究班の調査で、16歳~49歳の女性の6人に1人が妊娠中絶を経験、その内の7割が罪悪感を抱いたり、自分を責めている事が明らかになった。こうした女性たちの心に、2人の医師が、対話を通して正面から向き合う病院が埼玉県にある。
院長の中山政美(まさよし)さんは、分娩室で「貴方が産んでくれた新しい命だ」と母親に声をかけ励ます。そして副院長の鮫島浩二さんは母親学級で、命の尊さを訴える自作の詩を読み聞かせる。2人の語り掛けに、女性達は涙を浮かべ耳を傾ける。
一方で、2人は辛い現実とも向き合う。年間80人を越える女性が中絶の相談に訪れるのだ。その日のうちに手術を行う産婦人科も多い中、この病院では簡単に中絶をしない。まず鮫島さんが、胎児の将来を想って欲しいと語り掛け、本当に産む事が出来ないのか何度も女性と考える。それでも中絶を選ぶ女性は中山さんと対話を行う。中山さんは相手の男性も呼び何時間もかけて話し合わせる。迷ったまま中絶すれば、女性の心に深い傷を残す事になるからだ。2人の医師との数週間の対話を通し、女性は胎児の命と自らの人生に深く思いを致し最終的な結論を出す。
“いのち”をめぐって女性たちの心と向き合う、2人の医師の格闘を見つめる。

  • 打ち合わせをする中山政美院長(左)と鮫島浩二副院長(右)
  • 中絶した女性の心と向き合う中山政美院長