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地震全般・各地の地震活動

第2回  山陰地方の大地震とひずみ集中帯

執筆者

西村 卓也
京都大学防災研究所地震予知研究センター 准教授
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山陰地方の大地震

前回のコラム(第1回 2018年4月 島根県西部の地震/西村)で島根県を中心とした地域に発生した地震を紹介しましたが、より広域の中国地方とその周辺で過去約100年間に発生した大地震を見てみると、特徴的な分布をしていることが分かります。

【図1】は、この地域で1923年以降に発生した深さ20kmより浅い震源の大地震と活断層の分布です。島根県の中部から京都府の北部にかけての日本海沿岸域では、多くの大地震が発生しており、山陰地方の地震帯と呼ばれています。

山陰地方の地震帯で発生した大地震で最も人的被害が大きかったのは、1927年の北丹後地震(M7.3)で、現在の京丹後市峰山町(きょうたんごし・みねやまちょう)を中心に家屋の倒壊や火災による大きな被害が生じ、2900人以上が死亡しました。1943年鳥取地震(M7.2)は、鳥取市の中心部の木造家屋の多くが倒壊するような壊滅的な被害をもたらし、およそ1100人の方が死亡しました。これら2つの地震では、断層のずれが地表に現れ、北丹後地震では山田断層帯(郷村断層を含む)、鳥取地震では鹿野-吉岡断層として知られています。これらの断層は活断層としても認定されており【図1参照】、一部は保存されて今でも断層のずれを見ることができます【図2】。しかし、活断層との関連がはっきりしているのはこの2つの地震だけで、山陰地方の地震帯に主要活断層はほとんどないのです。

山陰地方の地震帯で発生した2000年の鳥取県西部地震(M7.3)や2016年10月21日の鳥取県中部の地震(M6.6)では、多くの負傷者や建物の被害が生じましたが、これらの地震に関係する活断層は知られていません。しかし、山陰地方では活断層以外に大地震に関連すると考えられる証拠(現象)が見つかっているのです。

微小地震分布が示す山陰地方の地震帯

大地震はたまにしか発生しませんが、通常私たちが感じることのない微小地震は毎日何百回も発生しています(※)。この微小地震の分布を見ることによって地下に潜在する断層が浮かび上がってくる場合があります。【図3】は、高精度の震源解析(*1)により判明した2001年~2012年に深さ20kmより浅い場所で発生した地震の震源分布です。この微小地震分布の特徴の1つとして、山口県から京都府の北部まで、ほぼ海岸線に平行な帯状の震源分布が挙げられます。

(※)気象庁による地震の震源リストから、日本列島周辺で発生した深さ20kmより浅い地震の回数をカウントすると、2017年におけるM3以下の微小地震の発生数は182,692回で、1日平均では約500回となります。一方でM6以上の「大地震」は、1923年~2017年の95年間で497回発生し、1日平均の発生数は0.014回です。

この地震の帯が、微小地震分布に現れた山陰地方の地震帯です。地震帯の中の詳細な震源分布を見てみると、島根県西部や鳥取県東部のように海岸線に平行な線状に地震が集中しているところ(図3のA)もあれば、島根県東部から鳥取県西部のように海岸線とは直交する「北北西-南南東」方向の線状に配列する地震群が目立つところ(図3のB)もあります。これらの地震群の線上配列は地下に潜在する断層と関係していると考えられており、このような潜在する断層が山口県から京都府北部まで断続的に続いていることになります。前回紹介した2018年4月の島根県西部の地震(M6.1)も、もともと微小地震が活発だった場所で北北西-南南東方向の断層が動いて起きた地震であり、地下の潜在断層が大地震と関連していることを示す証拠と言ってよいでしょう。

地殻変動から見えてきた「山陰ひずみ集中帯」

日常的に進行しているゆっくりとした地殻変動をGPS等によって観測し、断層周辺に集中するひずみを検出することで、地下の断層の動きを見つけることができる場合もあります(断層周辺で進行する地殻変動については、第1回「活断層と内陸大地震」/遠田晋次【図1】を参照)。

【図3】には、2005年4月から2009年12月までの「電子基準点において観測された地殻変動」も示してあり、図中の矢印は、固定局に対して各観測点が水平方向に1年あたりどれだけ動いたのかを表しています。
島根県東部や鳥取県を見てみると、山陰地方の地震帯の北側の観測点では東向きに約5mm動いていますが、南側の観測点では1mm~2mmしか動いていません。このことから、島根県東部から鳥取県の山陰地方の地震帯では1年あたり3 mm~4mmの速さで右横ずれ運動が起こっていることになり、この領域は周辺よりひずみ速度が大きいことから「山陰地方のひずみ集中帯」と呼ばれています。このような地殻変動が、山陰地方の地震帯で地震を発生させる原動力となっていると考えられるのです。

未成熟な断層帯で発生する山陰地方の地震

このように山陰地方では、微小地震や地殻変動のデータから地下の潜在断層の存在やひずみの集中が示唆されますが、主要活断層がないことはどのように考えればよいのでしょうか?

微小地震やGPS観測等による地殻変動は、現在進行中の現象ですが、活断層は過去数万年以上にわたって累積した断層のずれが地形に現れたものです。山陰地方には主要な活断層はありませんが、雁行状(がんこうじょう=斜めに並んでいる状態)に分布する「比較的長さが短く、累積変位量の小さな活断層」は多く見つかっており、活断層の発達段階としては初期段階のものだと考えられています (*2)。また、全体として海岸線に平行で、右横ずれ運動を示す地震帯やひずみ集中帯に対して、斜交する左横ずれの断層があるという分布も断層形成の初期段階に見られる特徴として解釈できます。

これらのことを照らし合わせると山陰地方の地震帯は、地質学的な時間スケールでは最近形成されたため活断層としては未成熟であるが、現在では地殻変動が活発になった地域であると考えられます。したがって、今後も活断層がある場所と同程度に大地震が起こりやすい地域と考えて、地震に対する備えをしていくことが重要です。


参考文献:
(*1)Yano TE, Takeda T, Matsubara M, Shiomi K (2017) Japan Unified hIgh-resolution relocated catalog for earthquakes (JUICE): Crustal seismicity beneath the Japanese Islands. Tectonophysics 702:19-28. doi:10.1016/j.tecto.2017.02.017
(*2)岡田篤正(2002) 山陰地方の活断層の諸特徴. 活断層研究, 2002, 17-32.

(2018年9月28日 更新)