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地震全般・各地の地震活動

第1回  2018年4月 島根県西部の地震

執筆者

西村 卓也
京都大学防災研究所地震予知研究センター 准教授
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未明に起きた震度5強の地震

2018年(平成30年)4月9日午前1時32分ごろ、島根県西部を震源とするマグニチュード(M)6.1の地震が発生しました。この地震により島根県大田市で震度5強、出雲市などで震度5弱を観測したほか、中国地方を中心に西日本の広い範囲で震度4~震度1が観測されました。この地震の震源は深さ12kmと浅く、震源域周辺では強い地震の揺れに見舞われ、重軽傷9名、被害家屋は432棟に及ぶ被害が生じました(5月25日現在、消防庁調べ)。

この地震が起きたときに「なぜ島根県で地震が発生したのか?そのメカニズムは?」、「今後さらに大きな地震が来る可能性はあるのか?」と疑問に思った方もいると思います。

島根県というと2011年の東北地方太平洋沖地震の余震などによって活発な地震活動が続いている東北地方の太平洋側や関東地方、30年以内に70%〜80%の確率で巨大地震(M8~M9クラス)が発生すると予測されている南海トラフに面した西日本の太平洋沿岸域に比べて、比較的地震の少ない場所というイメージがあるかもしれません。西日本の太平洋沿岸域は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むプレート境界面で発生する海溝型地震の震源域に近く、海溝型地震が起きると津波や地震動により被害が生じることが予測されています。その点、山陰地方はプレート境界面から離れているため、海溝型地震による被害からは比較的安全な地域と言えるでしょう。しかし、今回の地震のような震源の浅い内陸地震は、山陰地方でも過去に何度も発生してきました。本コラムでは、4月9日に発生した地震をはじめとする「山陰地方で発生する地震の特徴」についてまとめます。

島根県西部の地震と地殻変動から分かること

今回の地震と過去に周辺で発生した地震の震源と活断層の分布をまとめたのが【図1】です。特徴としてまず挙げられるのは、余震が「北西-南東」方向に並んでいることです。気象庁などの詳しい解析(*1)によると、今回の地震の余震は、地図上では北西-南東方向にほぼ直線上に並び、深さ方向にもほぼ直線に並んでいて、その広がりは水平方向に約5km、深さ方向には約7kmの範囲に集中しています。そのため、今回の地震は長さ5km程度の北西-南東方向の断層がずれ動いて起きたものと推定されています。断層がどのようにずれ動いたかは、地震波の解析や地殻変動を調べることによって推定することができます。

今回の地震に伴ってGPSなどを活用した電子基準点(*2)において観測された地殻変動を【図2】に示します。水平方向の地殻変動を見ると、余震域の西にある大田観測点では東方向に約1cm、余震域の北東にある佐田観測点では北東方向に約4mm、それぞれ動いたことが観測されました。大田観測点では約2cmの沈降(地盤の沈下)も観測されました。このデータから推定された地下の断層のずれ方は、北西-南東方向の断層を挟んで北東側の岩盤が南西側の岩盤に対して左にずれ動く「左横ずれ」と呼ばれるタイプで、ずれの量は約60cmでした。今回の地震の震源の南東側では、1978年と1930年に今回と同規模(M6.1)の地震が発生しており、100km東では2000年に鳥取県西部地震(M7.3)が発生しています【図1】。これらの地震も同じタイプの地震と考えられます。

続発する傾向がある山陰地方の地震

2016年に発生した熊本地震は、M6.5の地震の28時間後にM7.3の地震が発生し、続発する大地震として注目を集めました。大地震に先行して発生する地震を前震と言いますが、山陰地方でも前震の発生や大地震が続発した例が知られています。2000年鳥取県西部地震の震源域では、1989年から1990年にかけてM5クラスの地震が続発し、10年後に本震が起こりました。前述の1930年の地震も2時間の間にM5.9とM6.1の地震が続発しました。一般的に火山の近くで発生する地震は続発する傾向があることが知られており、今回の地震も三瓶山(さんべさん)という活火山の近くで発生した地震です。現在のところ、4月9日の地震の震源域周辺で大きな地震は発生していませんが、今後も地震に対する備えは必要です。

活断層は少ない山陰地方

このように、過去に内陸地震が発生してきた山陰地方ですが、顕著な活断層はあまり見つかっていません。【図1】からも、今回の地震の震源域周辺には、国が認定する主要活断層がないことがわかります。活断層とは、地震によってずれ動いた断層が地表に達し、崖を形成したり川や尾根をずらしたりしたことによる地表の変化が累積して、地形から認識できるようになったものです。地震が過去に繰り返し起こったことを表す「古傷」のようなものです。今回の地震による地表での動きは1cm程度だったため、この規模の地震だけでは地形として認識される活断層はできません。山陰地方で活断層が見つかっていないことは、地形を形成するほど大きな地震が繰り返し発生していないことになるので、今後も大きな地震はあまり起こらないと考えてもよさそうです。

しかし、電子基準点での観測データから、山陰地方は周囲の地域に比べて1年あたりの地殻変動が大きく、ひずみがたまりやすい地域であることがわかってきました。このような「ひずみ集中帯」は、内陸地震が活発な地域と一致しており、山陰地方では今後も内陸地震が発生する可能性があることになります。なぜ「ひずみ集中帯」で内陸地震が発生するのか、次回のコラムで詳しく説明します。


参考文献:
(*1)地震調査研究推進本部地震調査委員会(2018), 2018年4月の地震活動の評価, 平成30年5月11日
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2018/2018_04.pdf
(*2)地殻変動の監視や測量の基準となることを目的として、GPSなどの測位衛星からの電波を受信して解析することにより、日々の位置が正確に求められている観測点のこと。位置の測定精度は水平方向で数mm、上下方向で1~2cm程度である。国土地理院によって全国約1300か所に設置されている。

(2018年7月31日 更新)