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“過労死をなくしたい” 横浜市の教員の夫を亡くした妻の訴え

  • 2024年6月15日

2022年度、仕事が原因の過労死と認定された人は全国で121人。
職場での死が後を絶たない状況が続いています。
こうしたなか、労働問題に詳しい弁護士の助けも得ながら夫の過労死を証明した女性が、自身の後悔を胸に、早めに相談することの大切さについて語ってくれました。

“死から一番遠いと思っていた"

今回取材に応じてくださった工藤祥子さんは、17年前、過労死で夫を亡くしました。
夫の義男さんは、横浜市の中学校で保健体育の教員をしていました。
亡くなったのは40歳の時でした。

学校の行事で仮装する義男さん

義男さんは責任感が強く、どんな生徒にも分け隔てなく親身に寄り添う教員だったといいます。

工藤祥子さん
本当に、明るくて、死からは本当一番遠い先生っていう感じの、元気いっぱいの先生でした。本当にいつも子どもたちのことを思っていましたので、夫が担任をしていたこどもたちの名前、今でも覚えています。夫が亡くなったあと、お墓参りに行ったら、お墓をきれいにしてくれている子がいました。話を聞いてみたら、夫は担任でもなく、部活の顧問でもなかったそうですが、「先生には生活指導でお世話になって、そのおかげで立ち直ることができたんです」って。どんな子に対しても、それだけ思いを持って接する人でした。

環境が変わり業務も重なる中…

義男さんは、当時、新しい学校に赴任したばかりでした。
慣れない環境のなか、生徒指導の担当やサッカー部の顧問など、いくつもの業務が重なる状況になっていました。
早朝は部活の顧問としていわゆる"朝練"があり、夜は残業で9時頃の帰宅、それでも終わらず家に仕事を持ち帰る日々が続いていました。
徐々に頭痛や不眠に悩まされるようになっていったといいます。

工藤祥子さん
だんだんだんだん、なんか「楽しい」っていうよりも「疲れた」とか、「しんどい」とか、そういうふうなことを言うようになっていきました。もう「病院に行って」って言ってたんです。何度も、何度も。

不安を抱えたまま、2泊3日の修学旅行の引率業務をこなした義男さん。
しかし帰宅後、数日間、激しい頭痛に襲われた末に、病院の待合室で倒れ、くも膜下出血で帰らぬ人となりました。

夫が亡くなってしまう前にもっとできることはなかったのか―。
工藤さんは今も後悔しているといいます。

工藤祥子さん
やっぱり自責の念というのを持っています。あの時に無理して病院に行かせればよかったって。「あのときに休ませればよかった」、「だったら死ななかったんじゃないか」とか。

“過労死"認定の壁

悲しみにくれる中、工藤さんはさらにショックを受けます。

夫の同僚の助けを得て、民間企業の労災にあたる公務災害の認定を申請しましたが、結果は「公務外の災害」。
過労死とは認められなかったのです。

工藤祥子さん
仕事が原因じゃないっていうのはどういうことなんだろうって。頭の中がパニックになって。なんでしょうね…現実として受け止められなかったというか。同僚の方たちも「過労死だ」と皆さん言っていているのになぜ過労死が認められないんだろうと。夫の人格を否定されたような、そんな気持ちにもなって、すごくつらかったです。

弁護士の助けを得て

そんな時に工藤さんがニュースで知ったのが、弁護士による過労死の相談窓口でした。
工藤さんは、すぐに電話で相談し、弁護士のアドバイスのもと、学校内外の会議や部活に関わる準備など見過ごしていた労働時間の洗い出しを行いました。
さらに、責任の重い業務がいくつも重なっていた実態を証明する書類も作り直していきました。

そして、過労死が認められなかったことを不服として審査請求を行った結果、「公務外の災害」とした前の決定は取り消しに。
義男さんの死から5年半を経て、過労死が認められました。

過労死をなくしたい

工藤さんにとって義男さんが死に至るまでをたどるのはつらい作業でした。
それでも、夫のために過労死の事実を明らかにしたい、そして同じような悲劇はもう二度と起きてほしくないという思いで向き合ったといいます。

工藤祥子さん
まず1番は、夫がただ亡くなったのではなく、「仕事が原因」ということをちゃんと認めてもらう、「尊厳」をちゃんと認めてもらいたいということです。それと、自分の子どもや生徒さんたちに「お父さんがなんで亡くなったのか」「先生がなんで亡くなったのか」ということをきちんと示したかった。仕事をする中で「今は休みづらい」という方もたくさんいらっしゃると思います。ですが、頭痛が続くとか、眠れないとか、訳もなく涙が出るとか、そういう状態に陥ったら、それはもう異変が現れているということなので、仕事が原因だということを疑ってほしいです。無理をしたままの状態が続くと、もうそのことが「おかしい」と思えなくなってしまって、それが過労死につながってしまう。自分の中でまず「おかしいな」と気づくことが大切で、気づいた時には相談するとか、とにかくいったん休むとか、そういうことが大切だと思います。

「ためらわず早めの相談を」

過労死問題を専門として相談を受け付けている弁護士は、長時間労働やハラスメントなど、いままさに仕事で苦しんでいる本人やその家族に、1人で悩みを抱え込むことがないよう、遠慮せずに相談してほしいと呼びかけています。

青柳拓真弁護士
幸せになるために仕事をするはずなのに、その仕事が原因で亡くなってしまうというのは本当にあってはならないことです。私たち、過労死対策の弁護団は、どういう方法で被害を救済できるか、どうすれば予防につなげられるかということをいつも考えていますので、お気軽に相談していただければと思います。

相談窓口

労働に関する問題について相談を受け付けている主な窓口は以下の通りです。
▼全国一斉「過労死・ハラスメント労災110番」(※6月15日のみ
 電話番号:0120-777-654
 受付時間:午前10時から午後4時まで

▼過労死弁護団全国連絡会議(過労死110番)
 電話番号:03-3813-6999
 受付時間:平日の午前10時から正午/ 午後1時から午後5時

▼厚生労働省(労働条件相談「ほっとライン」)
 電話番号:0120-811-610
 受付時間:平日の午後5時から午後10時
      土・日・祝日の午前9時から午後9時(※12月29日から1月3日は除く)

  • 関口裕也

    横浜放送局 記者

    関口裕也

    2010年入局。福島局、横浜局、政治部を経て、2022年から再び横浜局。神奈川県政を中心に取材。

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